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膵癌に対する外科的治療の今後の位置づけは?

No.4945 (2019年02月02日発行) P.56

本田五郎 (新東京病院消化器外科主任部長/消化器がん腹腔鏡・ロボット手術センター副センター長)

里井壯平 (関西医科大学外科学講座胆膵外科教授)

登録日: 2019-02-01

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  • 膵癌は最も予後不良な悪性疾患のひとつですが,近年有効な抗癌剤治療が出現し,少しずつですが予後の改善が得られています。いまだに「外科的切除が膵癌に対する唯一の根治的治療」というフレーズがしばしば用いられますが,実際には,切除可能であっても抗癌剤治療を抜きにして根治が得られる患者はごくわずかです。膵癌に対する外科的治療の概念が今後どのように変わっていくのか,術前治療の位置づけもふまえて,膵癌治療の第一人者でありオピニオンリーダーでもある関西医科大学・里井壯平先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    本田五郎 新東京病院消化器外科主任部長/消化器がん腹腔鏡・ロボット手術センター副センター長


    【回答】

    【低侵襲手術と拡大手術の二極化が進行すると考えられる】

    浸潤性膵管癌(以下,膵癌)全体の5年生存率はいまだ10%以下であり,他がん腫を大きく引き離した最難治癌です。その要因は,診断時にはおよそ70%が切除不能膵癌(局所進行と遠隔転移)であり,根治につながることはきわめて稀です。

    一方で30%を占める切除可能膵癌は外科的切除による根治が期待されるものの,手術単独ではその5年生存率はおよそ10%でした。CONNKO- 01研究1)により,膵癌根治切除術後にゲムシタビンによる補助化学療法を行うことで5年生存率が20%に到達したことが報告されました。わが国におけるJASPAC-01研究2)により,S-1による補助化学療法がゲムシタビンの治療成績を上回り(ハザード比:0.57),5年生存率が50%近くに到達しました。以降,切除可能膵癌の標準治療は根治切除+S-1による補助化学療法となりました。現在,切除可能膵癌に対して術前化学療法(ゲムシタビン+S-1)の有用性を証明するために,切除+S-1による補助化学療法を対照群とした無作為化比較第3相試験(PREP-02/JSAP-05試験)3)が行われています。2019年度1月のASCO-GIでその結果が報告される予定であり,切除可能膵癌における術前治療の世界初のエビデンスとなります。

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