No.4946 (2019年02月09日発行) P.38
鈴木 裕 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科講師)
森 俊幸 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科教授)
松木亮太 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科)
小暮正晴 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科)
須並英二 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科教授)
正木忠彦 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科教授)
阿部展次 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科教授)
阪本良弘 (杏林大学医学部外科学教室消化器・一般外科教授)
登録日: 2019-02-12
最終更新日: 2019-02-06
総胆管結石に対しては内視鏡結石除去+胆嚢摘出術による二期的治療が一般的である。しかし,内視鏡治療と外科治療の成績の差はなく,施設により慣れている方法での治療が良いと思われる
開腹手術と腹腔鏡下手術ではその成績に差はみられない。腹腔鏡下手術は必ずしも普及率は高くないが,現在多くの施設で行われている
肝内結石症に対しては内科的治療,特に内視鏡的治療の普及が目覚ましい。しかし,問題点として,結石遺残率や再発率が高いことが挙げられる
外科手術としては肝切除術が最も多く行われており,内科的治療不成功例や,肝萎縮例,肝内胆管癌合併例が適応となる
総胆管結石(common bile duct stone:CBD stone)の治療は現在,外科的治療と内科的治療が選択可能である。
内科的治療は内視鏡的経乳頭的に総胆管結石を除去した後に,二期的に胆囊摘出術を行うことが最も一般的である。外科的治療と内科的治療の優劣については,いくつかのメタアナリシスが報告されている。
外科手術(開腹手術と腹腔鏡手術のいずれも含む)と内視鏡的結石除去+胆囊摘出術の2群を比較するメタアナリシスでは,結石完全除去率,合併症発生率,重度の合併症発生率,死亡率,追加治療の有無,これらすべてにおいて有意差を認めなかった1)2)。
日本内視鏡外科学会によるアンケート調査では,年々,総胆管結石症の治療例が増えており,2015年には2738例となっている(図1)3)。その結果でも内視鏡的治療との併用が2179例(80%)と最も多く行われていた。一方,日本胆道学会が行った全国調査では,治療を行った総胆管結石症143例のうち,内視鏡治療単独が62%,内視鏡治療+胆囊摘出術が15%,外科治療単独が2%であり,依然として内視鏡治療を中心とした二期的治療が中心であった4)。これらの結果から,わが国では内視鏡的結石除去術を施行した後に胆囊摘出術を行う二期的治療が一般的であり,多くの症例が内視鏡治療と併用して行われていることがわかる。しかし,各メタアナリシスの結果から,内科的治療と外科的治療との成績の差はなく,内視鏡治療よりも外科的治療に慣れている施設もあることから,日本消化器病学会の胆石症診療ガイドラインでは「内視鏡的総胆管結石除去術または外科的総胆管結石手術を行うことを推奨する」とされ,各施設の専門性により決定されるべきとしている5)。