【創関連症状(不快感や突っ張り感)において,開腹手術に比べ有意に少なかった】
生体肝移植ではドナーの安全性が最優先である。同時に,健常人に対する手術であるため,創はできるだけ小さなほうが良い。その観点からは腹腔鏡手術が望ましいが,2018年7月現在,生体肝移植ドナー手術は保険適用になっていない。
そこで筆者らは,12年から長崎大学方式1)の腹腔鏡補助下生体肝移植ドナー手術を導入した。手順は,①8cmの上腹部正中切開を置く,②Gelport®を装着し,第一助手が左手で肝を把持し術者が肝を授動する,③正中切開を上下に延長(左葉グラフトでは12cm,右葉グラフトでは14cm)する,④直視下に肝門部処理と肝実質離断,胆管切離を行う,⑤肝動脈,門脈,肝静脈を切離し,グラフト(移植する肝臓のこと)を採取する,である。
当科生体肝移植ドナー手術153例(外側区域グラフト採取術を除く)において,腹腔鏡補助下手術と開腹手術の結果を比較検討した。右葉グラフト採取術において,腹腔鏡補助下手術が開腹手術に比べ有意に出血量が少なかった。術後合併症や鎮痛薬投与の有無,在院日数などには両群間で有意差を認めなかったが,創関連症状(不快感や突っ張り感)は腹腔鏡補助下手術が開腹手術に比べ有意に少なかった2)。
【文献】
1) Soyama A, et al:Transplant Proc. 2015;47(3): 679-82.
2) Kitajima T, et al:Surg Endosc. 2017;31(12): 5101-10.
【解説】
海道利実 京都大学肝胆膵・移植外科准教授