厚生労働省は20日の「医師の働き方改革に関する検討会」で、2024年4月から適用される勤務医の時間外労働の上限規制について、地域医療確保のために35年度末まで適用可能とする特例水準を「年1860時間以内」とする案を示した。研修医や専攻医など「集中的に技能向上のための診療が必要な場合」の特例水準も同じ上限とする方針。いずれの特例水準も、適用対象となる医療機関を都道府県が指定し、管理者に勤務間インターバルの確保などの健康確保措置の実施を義務づける。
厚労省はこれまで、診療従事勤務医に適用する原則(A水準)として「年960時間以内」、地域医療を安定的に確保するための暫定特例(B水準)として「年1900~2000時間以内」を提案していた。しかし、「過労死ライン超え」を指摘し反発する意見などを踏まえ、厚労省が勤務医の労働実態に関する調査データを精査。労働時間から上司等からの指示のない時間(いわゆる研鑽)を除いた結果を考慮し、従来よりも短い上限の提案に至った。
研修医や専攻医の特例(C1水準)の案では、研修プログラムごとに時間外労働の直近の実績を基に想定最大時間数を明示。研修希望者は各医療機関の時間外労働の実態を踏まえて応募することになる。初期研修医の追加的健康確保措置については、B水準などより手厚くする。
一方、医籍登録後の臨床経験が6年目以降の医師を対象とした特例(C2水準)については、希望する本人が主体的に計画を作成して所属医療機関に申し出、医療機関が外部の審査組織の承認を得る形で適用するとした。
新たなB水準を巡り、20日の検討会では、馬場武彦構成員(日本医療法人協会副会長)が、大学病院医師のアルバイト(兼業)が救急医療を一定程度支えているという現実を指摘した上で「上限は当初の1900~2000時間とし、引下げは施行後に考えるべき」と主張。これに対し、渋谷健司副座長(東大大学院教授)が「現状追認と経営者視点の話ばかりで、現場の医師と患者の視点が欠けている」と批判を展開する場面もあった。
C水準については「上限いっぱいの労働を強制されず、本人のキャリアビジョンに応じた選択ができるようにすべきだ」との意見が出た一方で、「若手医師のやる気を削ぐ仕組みにならないように」と求める声も上がった。
同検討会は3月中の最終取りまとめを目指しており、議論は最終的な詰めの段階を迎える。
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