(東京都 M)
【原因者が費用を全額負担するのが原則】
解体された建物と隣家の建物とがどのような構造となっていたか,また,両建物が「建物の区分所有等に関する法律」(以下,区分所有法といいます)の適用がある区分所有建物であるか否か不明ですが,一般にテラスハウスと呼ばれている2階建連棟式の建物を想定して回答します。
連棟式建物は,隣家との壁を一部または全部共有しており,自己の所有する一方の建物を取り壊した場合,隣家との共有部分の壁の全部または一部を存置する必要があります。この場合,残存する建物の壁部分はむき出し状態となるので,その補修,修復工事が必要となります。
この自己の建物の取り壊しは,共用部分の変更に当たり,隣家の使用に特別の影響を及ぼすものと考えられることから,自己の建物部分を取り壊すにあたっては,隣家の承諾を要するものと考えられます(区分所有法第17条2項の類推適用)。そして,隣家がその承諾を与えるに際しては,共有部分を修復することを条件とすると考えるのが通常です。
したがって,ご質問のケースでは,原因者である質問者が全額負担するのが原則と考えるのが適切です。なお,具体的な修復工事の内容,工事費用等については隣家と協議するのが良いと思われます。
なお,このようなケースの工事費の負担等についての地方のしきたりは一般には存在しないと思われますが,同種建物の開発をした住宅団地などでは,分譲,管理業者に一定のルールが定められている場合もあるものと思われます。
【回答者】
澤野順彦 弁護士・不動産鑑定士