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予防・健康づくりで個人に対する金銭的インセンティブや「ナッジ」はどこまで有効か?[深層を読む・真相を解く(85)]

No.4954 (2019年04月06日発行) P.44

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2019-04-03

最終更新日: 2019-04-03

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本連載(4936号)で、安倍内閣の経済産業省主導の「全世代型社会保障改革」の予防医療への焦点化を検討した際、私は「予防医療を重視し、健康寿命延伸を目指すことには、国民への強制を伴わない限り、賛成」と書きました。

実は現時点では、経済産業省も厚生労働省も公式文書では「国民への強制」や個人へのペナルティには触れていません(経産省には個人的にそれを主張している方はいます)。それに代えて両省の文書は、行動変容を促進するための個人へのインセンティブや「ナッジ」の活用を強調しています。

2018年10月22日に開かれた厚生労働省の第1回2040年を展望した社会保障・働き方改革本部の資料3の「健康寿命延伸プランの方向性」の項では、保険者だけでなく、個人に対する「インセンティブの強化、ナッジの活用」が強調されました。例えば、「個人の予防・健康づくりに関する行動変容につなげる取組の強化(ナッジ、ヘルスケアポイント、ウェアラブル機器等)」です。同年10月15日の第2回経済産業省・産業構造審議会2050経済社会構造部会には、そのものズバリ「健康寿命の延伸に向けた予防・健康インセンティブの強化について」(資料3)が提出され、その内容は、本年3月12日の第4回2050経済社会構造部会の「疾病・介護予防に関する政策提案」にも盛り込まれました。

ただし、両省の文書でインセンティブやナッジが個人の健康行動に与える影響についてのエビデンスは示されていません。そこで医療経済学と行動経済学のこの点についての最近の知見を調べたので、紹介します。併せて、行動経済学に対する私の複眼的評価を述べます。

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