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植込み型デバイスを留置した患者へMRI検査を実施してよいか?

No.4955 (2019年04月13日発行) P.56

藤原康博 (熊本大学大学院生命科学研究部医用画像学分野准教授)

登録日: 2019-04-15

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脳梗塞診断のための脳MRI検査や,胆囊や膵臓精査目的のMRI検査において,整形外科領域(人工関節など)や循環器領域(冠動脈ステントなど)の人工物が留置されている患者であっても,最近の治療歴であればMRI検査に支障があることは少ないと聞きます。直接,治療を行った施設に問い合わせをすることも可能ですが,時間が経過し確認が取れないこともあります。このような場合,MRI検査は避けるべきなのか,どうしても必要な場合に限り行うべきなのでしょうか。判断の基準のようなものがあれば,ご教示をお願いします。

(千葉県 N)


【回答】

【まずツールを用いてデバイス情報を確認】

体内に留置される様々な植込み型デバイス(以下,デバイス)が普及し,これらを留置した患者のMRI検査を実施する機会が増えています。MRI検査は,3つの磁場(静磁場・傾斜磁場・高周波磁場)を用いて行われ,これらの磁場がデバイスに吸引,トルク,発熱,誤動作などを生じさせるリスクがあります。

これまで,ペースメーカーなどのデバイス患者にMRI検査を実施することは禁忌とされてきました。しかし,近年では製造技術の進歩によって,多くのデバイスは磁場の影響を受けにくいものに変化してきています。このため,デバイス患者であってもMRI検査を受けられるようになってきました。

デバイスのMRI検査の安全性(MR適合性)は,製造販売業者によって試験が行われ,国際規格に基づいて以下の3つに分類されます。

①MR Safe(すべてのMRI装置の環境で制限なく検査が可能)
②MR Conditional(ある特定の使用条件のもとでのみ検査が可能)
③MR Unsafe(すべてのMR環境において危険が生じ,検査が不可能)

MRI検査が可能な多くのデバイスは,②MR Conditionalに該当し,特定の使用条件のもと(たとえば,静磁場強度や比吸収率などの制限値)でのみ検査を実施することが可能です。さらに,「条件付きMRI対応心臓植込み型デバイス」などの電子機器では,使用条件だけでなく事前に担当医師や技師がトレーニングを受けたり,デバイスの設定変更が必要になるなど検査の実施にはさらに厳格な要件を満たす必要があるものもあります1)2)。これらのことから,デバイス患者のMRI検査を実施する際には,事前にデバイスの情報を知る必要があると言えます。

デバイスの安全性の情報は,一般に添付文書に記載されています3)。このため,デバイスの添付文書を確認し,MRI検査が可能な場合には,記載された条件にしたがって検査を実施することになります。確認はデバイス患者の安全を確保するために重要ですが,多大な労力がかかります。

この負担を軽減するために,デバイスのMRI検査の安全性をインターネット上で簡便に検索できるツール(医療機器のMR適合性検索システム)が実用化されています4)。デバイスの添付文書の内容に基づいて情報がわかりやすく集約されており,必要に応じて最新の添付文書を直接閲覧することも可能なため,確認の際には利用をお勧めします5)

一方で,数十年前に留置されたデバイスの場合には,確認が難しいこともあります。この場合における検査の可否や使用条件に関する明確な基準は,残念ながら存在しません。その理由は,デバイスの種類や製品ごとに,機能や形状,材質,留置される部位などが異なるため,リスクや安全性について一概に決められないからです。このため,デバイスの確認が難しい場合には,MRI検査を実施することによるリスクとベネフィットに鑑みて,それらの情報に精通した放射線科の医師や診療放射線技師らと相談しながら,検査実施の可否や条件を慎重に判断するのが望ましいと考えます。

【文献】

1) 日本医学放射線学会, 他:植え込みデバイス患者のMRI検査に関する注意. 2016.
[https://www.pmda.go.jp/files/000215128.pdf]

2) 不整脈デバイス患者のMRI検査情報サイト.
[http://cieds-mri.com/jadia/public/top/index]

3) 医薬品医療機器総合機構:医療機器情報検索.
[http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiSearch/]

4) メディエ株式会社:医療機器の適合性検索システム.
[https://www.medie.jp/solutions/mri]

5) 藤原康博:INNERVISION. 2017;32(6):44-7.

【回答者】

藤原康博 熊本大学大学院生命科学研究部医用画像学分野准教授

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