5月29日の中央社会保険医療協議会総会では、2020年度診療報酬改定に向け、「働き方と医療の在り方」が議題となった。診療側は、医療の質の維持と医療従事者の過重労働軽減を両立するには報酬上の評価の拡大による手当てが必要だと訴えた。しかし、支払側からは疑問の声が上がり、応酬が繰り広げられる一幕もあった。
4月に働き方改革関連法が施行され、医師以外の職種には時間外労働上限などの規制が適用された。診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会)は、働き方改革関連法の影響で「既に病院の人件費は明らかに増えている」と指摘。入院基本料を含め、働き方改革に対する評価のあり方を検討すべきだと述べた。松本吉郎委員(日本医師会)は「医師・看護師の負担軽減に最も効果的と言われているのが医師事務作業補助者だ」とした上で、「医師事務作業補助体制加算」の要件を中小医療機関にも取りやすい形に見直すべきだとの考えを示した。
一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会)は「医療機関の働き方改革の財源を患者が負担するのは違和感がある」と表明。「働き方改革は経営者のマネジメント改革や医療従事者の意識改革から始まる話。加算の拡大とか基本料を上げるというのは違う」と主張した。
これに対し、今村聡委員(日本医師会)は「医師の働き方改革は医療を受ける患者の安全に資する話でもある。どんな改革にも一定のコストがかかる」と理解を求めた。松本氏も幸野氏へ反論しつつ、医療技術の恩恵を受ける患者が一定の負担をするという原則について「保険者から被保険者への説明が欠けている」と苦言を呈した。
幸野氏は「『これなら必要』という加算は議論しなければならない」としつつも、安易に診療報酬で対応すべきでないとの考えは崩さず、「働き方改革の阻害になっている項目を撤廃するとか、時代に適合した要件にしていくための議論が先」と強調した。