【2013年より急性肝不全症例を除き,「自立歩行可能」を成人生体肝移植適応に加えた】
肝移植は,末期肝疾患に伴う障害肝を摘出して正常肝を移植する画期的な治療法である。しかし,術前の全身状態が不良である上に大きな侵襲が加わることから,術後早期死亡率は決して低くなく,ハイリスク・ハイリターンの治療法とされてきた。さらに当院では,他の移植施設で「移植適応なし」と判断されるような重症例も多く紹介され,医学的適応があれば肝移植を行ってきた。ただ,そのような重症例は,移植後重症感染症を併発しやすく,移植成績は決して良好とは言えなかった。
そこで,肝移植後死亡独立予後因子を検討したところ,肝移植待機患者の重症度スコアであるMELDスコアや術中出血量などは予後不良因子として認められず,術前低骨格筋量が独立予後不良因子であった1)。さらに,術前低骨格筋量症例であっても,周術期栄養介入可能症例は有意に予後が良好であった。そこで,2013年から,急性肝不全症例を除き,「自立歩行可能」を成人生体肝移植適応に加え,さらに積極的に周術期栄養リハビリの介入を行うこととした。その結果,術後早期死亡率が低下し,有意に移植後生存率が向上した2)3)。
【文献】
1) Kaido T, et al:Am J Transplant. 2013;13(6): 1549-56.
2) Kaido T, et al:Nutrition. 2017;33:195-8.
3) Sato A, et al:Liver Transpl. 2016;22(4):436-45.
【解説】
海道利実 京都大学肝胆膵・移植外科准教授