【骨格筋量低下,筋肉の質低下,内臓脂肪肥満のうち,1因子でも正常ならば適応あり】
前回(No.4964),術前サルコペニア(低骨格筋量)は肝移植後独立予後不良因子であるとの検討結果をふまえ,2013年から急性肝不全症例を除き,「自立歩行可能」を成人生体肝移植適応に加え,さらに積極的に周術期栄養リハビリテーション介入を行うことにより,術後早期死亡率が低下し,有意に移植後生存率が向上したと述べた。しかし,運用を続けるにつれ,「自立歩行可能」はやや主観的な基準であるため,①歩行距離は? ②点滴棒を支えにしても良いか? ③歩行スピードは? などの問題点が出てきた。
そこで,客観的な移植基準を樹立することにした。着目したのが,筋肉や内臓脂肪・皮下脂肪などの体組成である。筆者らは,術前骨格筋量低下,筋肉の質低下,内臓脂肪肥満が有意な肝移植後独立予後不良因子であることを明らかにし,これら3因子の異常因子数と移植後生存率がきれいに層別化された。この結果をふまえ,16年10月から,これら3因子を用いた客観的な生体肝移植適応(少なくとも1因子が正常であれば移植適応あり)を樹立し1),運用を開始した。その結果,18年6月現在,1年生存率98%ときわめて良好である。本移植適応の妥当性について,100例を目処に検証予定である。
【文献】
1) Hamaguchi Y, et al:J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2018;9(2):246-54.
【解説】
海道利実 京都大学肝胆膵・移植外科准教授