日本医師会は7月25日、今秋に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)2019に向け、「マスギャザリング災害」への医療対応をテーマに講習会を開いた。都道府県医師会とW杯試合開催地の地区医師会の理事らが出席し、テロ攻撃を含むマスギャザリング災害の基礎知識やターニケット(救命止血帯)による止血法を学んだ。
マスギャザリング災害とは、一定の期間・地域に同一目的で集合した多人数の集団における災害・事故を指す。国際的には、2万5000人以上が集まる場合に特別な医療・救護対応の準備が必要とされている。
セミナーで講師を務めた山口芳裕氏(日医救急災害医療対策委員会委員長)は、大規模イベントだからと言って全く新しい種類のリスクが発生するわけではなく、熱中症の増加など“悪意のないマスギャザリング災害”には「日常の救急診療の延長で対処できる」と説いた。しかしテロには「通常の医療は無力」と強調。近年の国際的動向から、国内でも爆弾テロを警戒すべきだと訴えた。
セミナーでは講義に続けて、爆発や銃撃による四肢切断等を想定したターニケット装着法の実習が行われた。山口氏は、鋭的外傷である爆傷・銃創への対処について、大量出血により3~8分程度で心停止に至るため、四肢からの出血をいかに迅速に止められるかが救命のカギとなると力説。「標準的な圧迫止血ではとても制御できない噴出性の出血には躊躇なくターニケットを使用すべき」とした上で、装着中には圧迫に伴う疼痛が必ず起こること、装着後2時間までは解除する必要はないこと、前腕・下腿でも止血効果があることなどを説明した。
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