医師の働き方改革に関する厚生労働省の検討会で構成員を務める馬場武彦氏(日本医療法人協会副会長)が27日、都内で講演し、7月に70年ぶりに発出された医師の宿直基準について「二次救急で宿直基準の許可が取れる」と歓迎した。基準で求められている“十分な睡眠”については、個人的見解とした上で「6時間」との考えを示した。
講演は、一般社団法人医療法務研究協会が主催するセミナーで行われた。
厚労省検討会が3月にまとめた報告書を踏まえ、厚生労働省は7月1日、宿日直に関する労働基準局長通知を発出した。ここでは、労働基準監督署による許可基準として、夜間に十分な睡眠を確保できることを前提に、①通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後に行う、②一般的な宿日直の業務以外に従事できるのは「特殊な措置を必要としない軽度の、又は短時間の業務」に限る─などの条件を提示。業務の1つの例として、「問診等による診察等(軽度の処置を含む)」を挙げている。
馬場氏は検討会構成員24名のうち、病院団体の代表は馬場氏を含め2名のみだったことから「地域医療を継続させることが自分の役割だと思い、議論に臨んだ。二次救急で宿直基準の許可が取れるかどうかが、今回の大きなテーマだった」と振り返った。
馬場氏は、以前の宿直基準は1949年(昭和24年)に発出されたものであり、現在の一般的な医療機関での宿直の実態とあまりにもかけはなれていたことを問題視。7月に発出された通知については、「ある程度、医師が睡眠をとれている二次救急で宿直基準の許可が取れる」と述べ、評価した。
通知にある“十分な睡眠”や“ 問診等による診察等(軽度の処置を含む)”の文言については「グレーな基準なので(労基署から指摘があった時のために)理論武装が必要」と説明。検討会では、より具体的な基準を求める意見があったとしながらも、「それをすると、(基準が)厳しくなり、地域医療が壊れてしまう」と懸念し、現行の文言を歓迎した。
その上で、 “十分な睡眠”の目安として「個人的見解では、6時間だと思う」との考えを披露。その根拠の1つとして、厚労省検討会に参考人として出席した睡眠予防医学が専門の谷川武氏(順天堂大教授)が「ストレス反応・抑うつ度は、労働時間とは有意な関連はなく、睡眠時間(6時間以上)と有意に関連した」と述べていることを紹介した。