わが国における胆道癌の罹患率は世界的にみると高率で,高齢化とともにその死亡者数は増加傾向にあり,がん診療における重要な疾患のひとつである
胆道癌の危険因子には膵・胆管合流異常をはじめとして,原発性硬化性胆管炎,ウイルス性肝炎,肝吸虫などのいくつかの背景疾患が重要であるが,依然として成因の多くは不明である
近年,印刷工場の従業員に高率に胆管癌が発生し,高濃度および長期間の1,2-ジクロロプロパンあるいはジクロロメタンへの曝露が原因と推察されているが,通常の労働安全衛生対策が実施されている環境においては,これらの有機溶剤による胆管癌発症のリスクはないと報告されている
次世代シークエンサーによる大規模なゲノム解析により,少なくとも胆道癌の11%には様々なタイプの遺伝性腫瘍が含まれていることが示唆されている。今後,ゲノム異常をターゲットとした発症リスク診断が可能になるものと思われる
胆道癌は「胆道癌取扱い規約」1)において乳頭部を含む肝外胆道系に原発したがん腫であり,胆管癌(肝外胆管癌),胆囊癌,十二指腸乳頭部癌に分類されているが肝内胆管癌もその生物学的特性から胆道癌として取り扱われることが多い。
わが国の胆道癌罹患率は世界的にみると高率で,高齢化とともにその絶対数は増加傾向にあり,がん診療における重要な疾患のひとつである。さらに,わが国における外科切除を中心とした集学的治療は非常に先進的であり,胆道癌診療を世界的にリードしている状況にある。
本稿では胆道癌における罹患率や死亡者数などの疫学や,遺伝子異常スクリーニングなどの手法を用いた最新の発症の危険因子なども含めて,胆道癌リスクファクターについて概説する。
わが国において「エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン」が策定され,胆道癌の診断,治療などについて診療の指針となる項目が掲載されており,胆道癌の危険因子についても言及されている2)。