【ワクチン2回接種者であっても軽症の水痘に罹患する場合がある】
Cell to cell感染が主体のVZVの感染防御には,液性免疫よりも細胞性免疫能が重要な役割を果たしているため,血中のVZV IgG抗体が必ずしも感染防御の指標とはなりません。VZV特異的細胞傷害性T細胞活性は,enzyme-linked immunospot(ELISPOT)アッセイや水痘皮内抗原液を用いた皮膚テスト等で評価可能ですが,日常臨床で用いられる一般的な検査ではありません。
水痘ワクチン2回接種の感染防御能は,筆者らが実施した症例対照研究の結果では94.7%と,過去の海外の研究同様,非常に高い効果が示されています1)。しかし,この研究でも水痘症例171例中15例(8.8%)は2回の接種歴がありました。
さらに,米国で実施された幼稚園,学校での水痘流行時の症例対照研究でも,表1に示すように2回接種の感染防御効果は93.9%と非常に高いものの,133人の水痘患者の中で20人(15%)が2回のワクチン接種歴があったことが報告されています2)。さらに,2回接種後のbreakthrough水痘症例の臨床症状は,未接種者と比し軽症化することも知られています。
つまり,水痘ワクチン2回接種の感染防御効果は明らかではありますが,2回接種者であっても軽症の水痘に罹患する場合があるため,水痘集団感染を抑制するためには,定期接種対象外の年長児を中心としたワクチン未接種者,1回接種者に対する2回接種の徹底が重要です。
【文献】
1) Hattori F, et al:Vaccine. 2017;35(37):4936-41.
2) Thomas CA, et al:Pediatr Infect Dis J. 2014;33 (11):1164-8.
【回答者】
吉川哲史 藤田医科大学医学部小児科学教授