ジカウイルスは,1947年にウガンダのジカ森林のアカゲザルから初めて分離され,ヒトからは1968年にナイジェリアで分離された1)。2007年ミクロネシア連邦のヤップ島でジカウイルス感染症の最初の大規模なアウトブレイクがあり,約300人の感染者が出た2)。2013年9月よりフランス領ポリネシアで始まったジカウイルス感染症の大流行は,ニューカレドニア,クック諸島にも波及し感染者は3万人以上にも上ると推計されている3)。2015年6月にブラジルで渡航歴のないジカウイルス感染症症例が報告され4),その後,急速に中南米で流行が広がった。
また,アジアでもタイ,ベトナム,インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,モルディブ,インドでもジカウイルス感染症の症例が報告されており,これら日本人観光客の多い地域にもジカウイルスが潜在しているものと考えられる5)。
人間社会においてジカウイルス感染症を媒介する蚊は,主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)とヒトスジシマカ(Aedes albopictus)である6)。ジカウイルスに感染し,ウイルス血症となった状態でこれらの蚊に刺咬されることで,蚊が感染性を持つようになる。
蚊を媒介する感染以外にも性交渉,母子感染,輸血による感染が知られている。