社会保障審議会医療保険部会(遠藤久夫部会長)は9月27日、2020年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論をスタートした。
同日の部会で厚生労働省は、9月19日の同審議会医療部会で提示した3つの基本認識と改定の「基本的視点と具体的方向性」を議論のたたき台として示した。方向性について委員から大きな異論は出なかった。厚労省は両部会での検討を踏まえ、12月中に基本方針を策定する予定だとしている。
基本認識について厚労省は、①健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現、②医師等の働き方改革の推進、③患者・国民に身近な医療の実現―の3つに整理。具体的方向性として、働き方改革については「医療機関内における適切なマネジメントやタスク・シフティングの推進、人員配置の合理化、チーム医療の推進、書類作成・研修要件の合理化等を通じた労務管理・労働環境改善のマネジメントの実践の評価」「柔軟な働き方や業務の効率化に資するICT化等の活用の推進」を例示した。また患者・国民に身近な医療の実現については、「かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価」「医療の質に係るエビデンスを踏まえた遠隔診療の評価」などを挙げた。
松原謙二委員(日本医師会)は医師の働き方改革の推進に向け、医師にしかできない仕事に特化できる体制を構築するよう求めた。松原氏は現状の医師の仕事について「あまりにも事務処理が多い。医療事務が十分にできる方を配置してほしい」と指摘した。また遠隔医療について、「医療機関にアクセスできない方のための仕組みだ」として、僻地や在宅医療など限定された条件下のみで認めるよう訴えた。
部会では、医療保険制度の状況についても議論した。安藤伸樹委員(全国健康保険協会)は、後期高齢者の窓口負担の2割への引き上げや医薬品の保険給付範囲の見直しの必要性を指摘。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会)や藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会)など複数の委員から同様の意見が相次いだ。
安藤氏はまた、政府の「全世代型社会保障検討会議」が9月20日に設置されたことを受け、「医療保険部会の議論を全世代型社会保障検討会議の議論に反映していただきたい」と強調。厚労省担当官はこれについて、「検討会議で議論の整理が進む中で、連携の形を考えていきたい」と述べた。