排尿障害の新進気鋭の医師の思いが詰まった渾身の一冊を紹介したい。泌尿器科非専門医、研修医、若手レジデントのベッドサイドでのガイドとして、これまでとは似て非なる内容となっている。
第1章では、疫学、病態を分かりやすく解説している。第2章では、排尿スコア、排尿日誌、残尿測定方法といった実践的内容が記載されている。第3章、第4章では各種薬物療法、行動療法、骨盤底筋訓練にとどまらず、難治例に対する仙骨神経刺激療法といった最新の治療も取り上げている。第5章、第6章では、年齢、性別に伴う特有の疾患について、たとえば男性であれば前立腺肥大症、女性では腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱、小児では夜尿症、さらには間質性膀胱炎、神経因性膀胱など、多岐にわたり解説されている。第7章では、尿閉、上部尿路の閉塞の際に必要な泌尿器科的応急処置について記載されており、泌尿器科へ紹介するタイミングの参考となる。最後の第8章では、在宅、おむつの問題、自己導尿といった社会制度についても解説されている。
この一冊を通して、排尿障害をあらためて俯瞰してみると、科横断的、多職種に関連しており、ひいては国家的な問題にも通じることに気づく。日本の男女の平均寿命がともに80歳に到達するが、健康寿命との開きは、男性で8年、女性で12年ともいわれる。健康寿命の延長に排尿の問題が密接に関与していることに誰も異論はないであろう。一方で、著者も序文で述べているように、「恥ずかしい」を理由に医療機関を受診しない患者は多く、「おしっこの問題は専門医へ」といった医療従事者の認識の甘さもまだまだ根強いと思われる。終末期医療に従事する私の知人がしみじみと言っていた。「人間、死ぬ3日前まで悩むのはやっぱり痛みとおしっこよ」。
広く排尿障害に関わる方々に、この1冊を手元に置き明日といわず今日から参考にすることをお勧めしたい。