アデノウイルスは7種(A~G),57以上の型(51種類の血清型および52以降の遺伝型)に分類される1)。感染したウイルスはリンパ節や扁桃で増殖するが,ウイルスの型により様々な病状を呈する。感染後も数週間~数カ月,便中に排泄される。アデノウイルスはエンベロープを持たないため,環境中でも安定性が高く,アルコール消毒の効果が弱い。感染力が強いので,家庭内,種々の施設内での感染拡大に注意が必要である。
小児に多く,飛沫感染する。高熱が7~10日間続き,咽頭・扁桃の発赤を認め,白苔を伴うことがある。乳幼児では,病初期に熱性痙攣を起こすことがある。血液検査では炎症反応が高値となる。全身状態は比較的良好だが,病後期には消耗による脱水症状をきたすことがある。
小児に多く,飛沫感染する。乳児の7型による重症肺炎は,急速に症状が進行して致死的になることが知られているが,1,2,3型でも間質性肺炎に伴う低酸素血症から,重症管理が必要となることがある。呼吸努力がみられる場合は,小児科医のいる入院施設での管理が望ましい。下気道感染症でみられる発熱や咳嗽は7日前後の経過で改善する。
小児および成人でみられ,接触感染する。7日間程度の潜伏期間を経て,眼球結膜充血,眼脂,眼痛がみられる。発熱は稀である。症状は2週間程度で自然軽快する。片側性に発症するが,後に反対側にも感染することが多い。回復期に点状表層角膜炎により視力低下をきたすことがある。感染症法の5類感染症の定点把握疾患である。学校保健法第3種に指定されており,医師が感染の恐れがないと認めるまで出席停止とする。
小児で多く,飛沫および接触感染する。夏場にプールを介して流行するため,プール熱とも呼ばれる。弛張熱,咽頭発赤,頸部リンパ節腫脹に加え,眼球結膜充血,眼脂を認める。感染症法の5類感染症の定点把握疾患である。学校保健法第2種に指定されており,症状消退後2日を経過するまで出席停止とする。
①(31,40,41型)は早期乳児でみられる。症状は下痢が主体で,7~10日間程度で自然回復する。経過中の脱水症に注意する。
②(1,2,5,6型)は乳幼児で多い。腹痛,腸間膜リンパ節腫脹がみられる。気道感染症が先行することがある。虫垂炎との鑑別を要することがある。腸重積症の約30%はアデノウイルスが原因である。
小児でみられ,男児が女児よりも2~3倍多い。排尿時痛を伴う肉眼的血尿が3日程度持続し,10日間程度で潜血も改善する。発熱はみられない。
脳炎脳症,心筋炎,横紋筋融解症などの原因としても知られる。骨髄移植後では全身臓器,ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)患者では,消化管や泌尿器でアデノウイルス持続感染症をきたすことがある。
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