中央社会保険医療協議会・総会は10月9日、2020年度診療報酬改定に向けた個別事項の議論として、がん対策や腎代替療法などを取り上げた。このなかで厚生労働省は、「緩和ケア病棟入院料」の算定要件として新たに外来や在宅での緩和ケアの実施を求めることや、「外来緩和ケア管理料」などの算定対象に末期心不全患者を追加することなどを提案した。
緩和ケア病棟は、がん疼痛をはじめとする身体的苦痛が増悪した場合のバックベッドとしての役割を果たすことや、症状が落ち着いた場合には速やかに在宅への復帰を図ることが期待されている。ところが、厚労省のデータによると、緩和ケア病棟入院料の算定医療機関のうち、「外来緩和ケア管理料」を届け出ている施設の割合は20.5%、「在宅がん医療総合診療料」は13.7%にとどまり、在宅復帰支援に積極的に取り組んでいるとは言えない状況にある。
一方、増悪と寛解を繰り返しながら徐々に身体機能が低下し、身体的苦痛や精神心理的苦痛の発生頻度も高い末期の心不全患者は、末期がん患者と同様に緩和ケアの提供が求められるが、現在、診療報酬上で評価されているのは18年度改定時に対象に追加された「(有床診療所)緩和ケア診療加算」のみ。だが、同加算の施設基準の医療従事者の臨床経験や研修に関する要件にも、心不全に関連した内容が含まれていない。
解決策として厚労省は、▶「緩和ケア病棟入院料」について、患者や家族の意向に沿った形で地域の連携を推進する観点から、外来や在宅における緩和ケアの提供を要件とする見直しを検討、▶「外来緩和ケア管理料」などの緩和ケアに関する評価について、末期心不全患者への取り組みの進捗状況などを踏まえ、算定対象や算定要件などを見直す─ことを提案した。
これら提案に委員から特段の反対意見はなく、「緩和ケア病棟入院料」の要件見直しについて支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「退院後に直接的なサポートができる医療機関がケアをしていくべきだ。外来と在宅での緩和ケアの要件化を検討することには賛同したい」と表明。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「在宅や外来を促すことは否定しない」としながらも、「検討の際には対象患者や医療機関間の役割分担を整理する必要がある」と注文をつけた。
腎代替療法では、腹膜透析と血液透析を併用する場合の扱いなどが論点になった。腹膜透析患者が血液透析を併用する際、「人工腎臓」を算定できるのは腹膜透析と同一施設で実施した場合に限られる。だが、腹膜透析ができる施設は透析施設全体の16.7%に過ぎず、患者が遠方への通院を余儀なくされるケースも少なくないという。このため厚労省は、腹膜透析の施設以外で実施した場合も算定が可能になるような要件の見直しを検討課題に位置づけた。