【指定の反応時間経過後の速やかな判定が最も正確だが,患者の臨床症状や所見などと併せて総合的に判断する】
インフルエンザウイルス抗原検出迅速診断キット(以下,キット)はわが国では広く普及し,20種以上の試薬が流通しています。従来の目視判定の試薬だけでなく,最近はデジタル機器判定をする試薬も加わり,検査実施施設の状況に応じて選択できるようになりました。それらの判定時間は試薬によって異なり,短いもので5分,長くても15分と規定されています。
添付文書に記載されているキットの精度(感度・特異度)は,臨床性能試験において,指定された判定時間で判定した結果得られたもので,一般的には指定より短い時間であれば感度は低くなり,逆に超過すれば特異度は低下する可能性があります。したがって,指定の反応時間経過後に速やかに判定して頂くのが最も正確です。
指定時間を超えて陽性ラインが出現した場合は,①インフルエンザであっても抗原量が少なかったり試料の展開が遅かったりして時間が経って陽性に出た場合と,②本来陰性であるのに発色粒子(金コロイドやラテックスなど)が沈着するなど非特異反応が進んだ場合とが考えられます。個々の結果が正しいかどうか一概には言えず,臨床現場で確認することもなかなかできません。診断に当たっては,患者の臨床症状や所見などと併せて総合的に判断して下さい。
目視で判定する場合には,少なくとも,コントロールラインが明瞭に出ていること,それぞれのラインの発色の仕方が本来の色調であること(黒ずんでいたり混ざったりしていない)を確認して下さい。メーカーによっては,判定時間超過の影響を検討していることもありますので,問い合わせてもよいかもしれません。
判定時間に限らず添付文書に沿って検査できなかった場合には,再度検体採取して,あるいは残りの抽出液を使用して,再検査するのが確実です。
【回答者】
三田村敬子 公益財団法人ライフ・エクステンション研究所付属永寿総合病院感染制御部