塩野義製薬の手代木功社長(写真)は10月23日、「インフルエンザの疫学と臨床」をテーマに都内で開いたメディア向けセミナーに出席し、日本感染症学会が同社の新規抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」(一般名:バロキサビル マルボキシル)の小児への慎重投与を提言していることについて「淡々と受け止めた上で、情報提供を継続していきたい」と述べた。
感染症学会インフルエンザ委員会の石田直委員長は10月16日、同学会の東日本地方会学術集会で抗インフルエンザ薬の使用に関する提言の改訂案を発表。その中でゾフルーザの12歳未満の小児への使用について「低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する」との見解を示した。この提言は24日、学会ホームページで正式に公表された。
23日のセミナーで手代木社長は記者の質問に答え、感染症学会の提言について、ゾフルーザに関しては2018/19シーズンのデータしかなく「断定的なことは言えない」中で「臨床の先生方がご自身の考えとして公表したもの」と捉えていると説明。
かつてタミフル(一般名:オセルタミビル)耐性のH1N1ウイルスが流行した時も、臨床医の間に「H1N1がずっとタミフル耐性になってしまうのではないか」という懸念が広がったが、実際にはそうはならなかったことを例に挙げ、ゾフルーザのデータも「2年、3年、4年と積み上げていかないといけない」と強調。その上で「先生方においていろいろなポジションがある中で、現在では(学会の考え方は)こうなっているというのは淡々と受け止めた上で、きちんと情報提供することを継続させていただきたい」と述べた。
手代木社長はまた、今年度のゾフルーザの売上げについて「特に成人を中心に適切にお使いいただくことで市場シェア40%を取ることを目標にしている」と述べた。
セミナーに同席した日本臨床内科医会インフルエンザ研究班リサーチディレクターの池松秀之氏は、感染症学会の提言について「慎重投与というのは、(ゾフルーザが)濫用され大量に使われたらどんなことが起こるか心配だということではないか。絶対使ってはならないと制限するレベルではないと理解している」とコメントした。