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■NEWS 働き方改革の重点項目化に保険者が反発─社保審・医療保険部会

No.4986 (2019年11月16日発行) P.68

登録日: 2019-11-05

最終更新日: 2019-11-05

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社会保障審議会・医療保険部会は1031日、2020年度診療報酬改定の基本方針について議論した。厚生労働省は前回の議論を反映させた、たたき台の修正案を提示。基本認識に新たな項目として、社会保障制度の安定・持続性の確保を追加したほか、4項目ある基本的視点うち、医師などの働き方改革を重点課題に位置づけた。保険者は、後期高齢者人口の増加を間近に控える中で、社会保障制度の安定性や持続性の確保こそ喫緊の課題などと主張し、働き方改革を重要課題とすることに異議を唱えた。

■基本認識は制度の持続可能性確保加えた4本柱に

修正後のたたき台で、改定の基本認識は、これまでの、▶健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現、▶患者・国民に身近な医療の実現、▶どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進−に、「社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和」が加わり、4本柱となった

改革の基本的視点では、「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革を推進」を重点課題とする考えを打ち出した。244月の医師の時間外労働の上限規制導入を見据えた対策の必要性を訴え、▶医療機関内の労務管理や労働環境改善など医師の負担軽減につながる取り組みの評価、▶タスク・シェアリングとタスク・シフティング、チーム医療の推進、▶地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制などの評価、▶業務の効率化に資するICTの利活用の推進−などを具体的方向性の例として示した。

■働き方改革の重点項目化、保険者と医療者で賛否分かれる

医師等の働き方改革を重点課題とすることについて、佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「4つの視点は全て重要であり、働き方改革だけを重点課題とすることに強い違和感がある」と反対意見を述べた。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「22年度から団塊の世代が後期高齢者になり始め、急増していくことを踏まえると、視点4(効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上)こそが、重点的に取り組むべき課題だ」と主張した。

これに対して松原謙二委員(日本医師会副会長)は、医療機関はすでに上限規制導入に向けた取り組みに着手しているとして、20年度改定の重要課題に位置づける妥当性を強調した。

■給付と負担の関係、保険給付範囲にも言及すべき─菅原委員

一方、菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は、総人口の減少と現役世代人口の急減など、40年に向けて社会保障制度を巡る環境の激変が見込まれているにも関わらず、「今回の基本認識は、これまでの累次の改定の基本認識からあまり変化がない」と批判。「給付と負担の関係、保険給付の範囲など、不人気で議論が難しい課題については明確な記載がない。まず基本認識できちんと説明するべきだ」と苦言を呈した。

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