RSウイルス(respiratory syncytial virus)は,かぜ症候群の原因ウイルスのひとつであるが,新生児・早期乳児が罹患すると細気管支炎や無呼吸発作を呈し,重症化することがある。慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を持つ高齢者でも肺炎に至ることがあり,高齢者施設での流行がしばしば報告されている。流行時期は地域差があり,亜熱帯では通年的に,温帯では冬季に流行する。わが国(沖縄を除く)では冬季に流行する疾患であったが,近年,通年的にみられるようになっている1)。
RSウイルスは飛沫感染するが,汚染した手指や物品を介した接触感染も重要であり,流行時期は手指や環境の消毒が感染拡大を防止するのに有用である。4~6日の潜伏期後,発熱・鼻汁・咳嗽などの感冒様症状が出現し,その後5~7日かけて下気道症状が増悪する。乳児期は細気管支炎となるため,喘鳴・呼吸困難(陥没呼吸,鼻翼呼吸)がみられ,哺乳不良や断眠となり消耗する。3カ月未満の乳児では無呼吸発作をきたすことがあり,突然死の原因となることも知られている。基礎に慢性肺疾患や先天性心疾患のある児では重症化しやすい。重症例では人工呼吸管理が必要になる場合がある。
東邦大学医療センター大森病院小児科では,2014年8月~2016年7月の2年間でRSウイルス感染症の診断を受けた275人のうち,57人(20.7%)が入院管理となった。入院となったうちの18人(31.6%)は基礎疾患があり,4人(7%)は人工呼吸管理を受けた。
RSウイルスは,2歳までにほとんどの人が感染するが,初感染後も繰り返し感染する。乳児では,罹患後も気道感染症などを契機に喘鳴発作を繰り返すことがあり,乳幼児非IgE関連喘息(反応性気道疾患)に分類される2)。
咳嗽・気道分泌物増加がみられた場合,考慮する。細気管支炎の所見として,胸部聴診で呼気性気管支雑音を聴取し,胸部X線で肺気腫像(正面像で横隔膜の平底化,側面像で胸骨後腔の拡大),無気肺がみられる。しばしば中耳炎を併発するため,鼓膜所見を確認する。RSウイルスのほか,ヒトメタニューモウイルス,ライノウイルス,パラインフルエンザウイルス等の感染症で同様の症状がみられる。
イムノクロマト法による迅速抗原検査キットは,鼻腔ぬぐい液検体を用いて15分で結果が判明し,感度80%前後,特異度100%であり,簡便で有用性が高い。2011年10月以降,入院中の患者または1歳未満の乳児で保険適用がある。病棟や集団保育で流行することが多く,周囲の感染症状況を確認することも重要である。
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