中央社会保険医療協議会・総会は11月6日、在宅医療について議論した。この中で、「在宅患者訪問診療料(I)2」を算定した場合に、訪問診療を依頼した主治医が依頼先の訪問回数を把握していないケースが一定数あることが問題視された。診療側は医療機関同士の情報共有を評価する個別点数がないことを背景要因の1つとして挙げ、評価の新設を要望したが、支払側は算定要件として義務化することを提案した。
2018年度改定で新設された「在宅患者訪問診療料(I)2」は、主治医の依頼で行なった訪問診療を評価する報酬。算定を月1回、6カ月を限度とする縛りがあるが、▶その診療科の医師でなければ困難な診療、▶すでに診療した傷病やその関連疾患とは明らかに異なる傷病に対する診療−などに該当すれば6カ月を超えての算定が認められる。
ただ、18年度改定の検証調査結果では、主治医が依頼先医療機関の初月の訪問回数を把握していないケースが、病院で23.1%、診療所で27.3%あり、この日の総会でも支払側から主治医と依頼先医療機関の情報連携の不十分さを指摘する声があがった。
総会に提出された厚生労働省のデータでは、患者の対象疾患が褥瘡から、悪性新生物、呼吸器疾患など多岐にわたることが示されていることなどから、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、実際には、主治医と専門医による連携が上手く機能しているとの見解を表明。「通常は適切な連携が図られ、訪問回数だけでなく、診療情報も提供していると思うが、情報提供に対する個別評価がない」とし、情報共有のさらなる促進のために診療報酬上の評価の新設を要望した。併せて月1回、原則6カ月までとされている算定回数や算定期間の見直しも求めた。
一方、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「訪問回数を把握していない状況をみると、連携先の医療機関が提供した医療を正確に把握しているかも疑問だ」と疑義を表明。「主治医との連携を実効性のあるものにするためには、在宅訪問診療料(I)2の要件にしっかり入れるなどの見直しが必要だ」と、情報提供の算定要件化を提案した。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)もこれに賛同。さらに6カ月以上の訪問が4割を超える点を問題視し、「(6カ月超の訪問は)例外として設定されたと理解しているが、違った状況になっている。情報連携は算定要件化し、期間もきっちり縛るべきだ」と述べた。
「在宅患者訪問褥瘡指導管理料」の見直しについても議論した。同管理料の届出施設は現在、約200施設に及ぶが、1月当たりの算定回数はわずか6回にとどまる。比較的軽度の褥瘡の平均的な治癒期間が1カ月未満であるにもかかわらず、同管理料は初回訪問のおよそ3カ月後に指導管理方針の再評価を行うカンファレンスを開くまで、報酬算定をできない仕組みであることが原因とみられ、診療側の松本委員は評価方法の見直しを要請。支払側の吉森委員は全体の報酬水準を維持することを前提に、初回訪問時と評価カンファレンス実施時で評価を分割することを提案した。
なお、同日の総会では、診療報酬調査専門組織の入院医療等の調査・評価分科会のとりまとめ、および医療技術評価分科会の検討状況の報告が了承された。