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特集:本当に認知症?認知症状の鑑別診断

No.4988 (2019年11月30日発行) P.18

中村桂子 (金沢大学大学院医薬保健学総合研究科脳老化・神経病態学/脳神経内科学特任助教)

山田正仁 (金沢大学大学院医薬保健学総合研究科脳老化・神経病態学/脳神経内科学教授)

登録日: 2019-12-02

最終更新日: 2019-11-27

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山田正仁:1980年東京医科歯科大学卒業。同大学大学院医歯学総合研究科を経て2000年より現職

1 なぜ認知症が問題なのか?
・超高齢社会を迎え,認知症の人の数は急増している。
・認知症の原因疾患は多彩であり,原因疾患の早期診断と治療介入が重要であるため,認知症患者の診療には認知症専門医のみならず,一般内科医やかかりつけ医の担う役割が大きい。

2 認知症の発症機序を知っておこう
・認知症とは,正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し,日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態である。
・原因疾患は,①変性疾患〔アルツハイマー病(AD),レビー小体型認知症(DLB),前頭側頭型認知症(FTD)など〕,②脳血管障害〔血管性認知症(VaD)など〕,③その他の疾患(神経感染症や内科的疾患,脳外科的疾患など)に大別される。なかでもADが最多で,次いでVaD,DLBの頻度が高い。
・発症メカニズムとして,ADではアミロイドβ蛋白とタウ蛋白の凝集・蓄積とそれに伴う神経変性,VaDでは脳血管障害(脳梗塞や脳出血)に由来する認知機能障害が,DLBではLewy小体の広範な出現が関与する。

3 ここを押さえる!確定診断への手順
・認知機能障害が疑われる患者が受診した場合,まず加齢に伴う正常範囲の認知機能低下や意識障害,精神疾患,精神遅滞や学習障害など,一見認知症と類似した病態・疾患を除外する。その上で,さらに治療が可能である内科的疾患や脳外科的疾患,薬剤誘発性の認知機能障害を鑑別する。
・問診および診察においては,発症・進行様式や認知機能障害の特徴を聴取し,随伴する神経症候によって鑑別を進める。
・血液や画像検査,脳脊髄液検査などを行い診断確実度を高める。

4 認知症治療の落とし穴
・治療標的となる症状は中核症状の認知機能障害と,行動・心理症状(BPSD)である妄想や易怒性等があり,薬物療法と非薬物療法を組み合わせる。
・高齢者は肝機能や腎機能が低下していることがあるため過剰量投与となりやすいこと,症状や薬剤に対する反応の個人差が大きいこと,服薬アドヒアランス向上のためにできるだけ処方をシンプルにすることが重要である。
・抗認知症薬は,わが国ではADに対してコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン)と,N-メチル-D-アスパラギン酸受容体阻害薬(メマンチン)が用いられる。
・BPSDに対して非定型抗精神病薬,選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬,漢方薬などを用いるが,いずれも薬剤によるメリットと,その副作用によるデメリットを十分検討した上で導入する必要がある。

5 専門医療機関ではここまでできる!
・近年,各種バイオマーカーの開発により,臨床症候に加えバイオマーカーも組み入れた診断基準が用いられるようになった。
・ADの診断においては,病態生理学的過程を示す科学的根拠として各種バイオマーカーを用いて診断確実度を示すことが可能である。

6 患者目線で考えるこれからの認知症診療
・認知機能低下を主訴にもの忘れ外来を受診する患者以外に,認知機能障害以外の主訴で通院している患者の中から認知症を早期発見することが求められる。
・検査と鑑別を進める際,根本的な治療が可能な疾患を見逃さない。
・患者の全体像や背景を把握し,原因疾患の適確な診断に基づき,今後の治療・ケアの方針を立て早期介入することが肝要である。

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