株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

Bacteroides属菌血症の感染巣,患者背景や治療のポイントは?

No.4989 (2019年12月07日発行) P.53

上蓑義典 (慶應義塾大学医学部臨床検査医学)

鈴木大介 (藤田医科大学医学部感染症科)

登録日: 2019-12-06

最終更新日: 2019-12-04

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • Bacteroides属菌血症の感染巣,患者背景や治療のポイントについてご教示下さい。藤田医科大学・鈴木大介先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    上蓑義典 慶應義塾大学医学部臨床検査医学


    【回答】

    【腹腔内や皮膚軟部組織の混合感染を想定し,ドレナージと抗菌薬で治療する】

    Bacteroides属は嫌気性グラム陰性桿菌で,Bacteroides fragilisをはじめ,30種以上が知られています。消化管や女性生殖器の常在菌で,外傷・手術・悪性腫瘍などによって損傷を受けた粘膜から侵入して常在部位の近傍に感染を起こします。膿瘍形成,悪臭を伴う排膿,組織壊死,ガス産生などが特徴的な所見です。通常は腸管や皮膚の他の常在菌との混合感染になります。特に大腸菌はB. fragilisと相乗的に活動することが知られており,腹腔内膿瘍でしばしば同時に検出されます1)。菌血症を起こした場合には死亡率が高く,16~43%2)~7)と報告されています。

    Bacteroides属菌血症の感染巣ですが,筆者らが行った138例の症例集積研究では,腹腔内感染症が約8割を占めました8)。内訳は大腸穿孔による腹膜炎(19%),胆道感染症(17%),大腸悪性腫瘍に関連した感染症(7%),イレウス(7%),虫垂炎(6%)といった具合です。褥創感染(6%),足壊疽(4%),複雑性腎盂腎炎(4%)がこれに続き,少数ながら歯性蜂窩織炎,膿胸,子宮内膜炎,CARD関連腹膜炎も認めました。過去の報告でも同様の傾向を認めます2)~7)が,筆者らが経験しなかったものとして,化膿性関節炎9),髄膜炎,脳膿瘍10),心内膜炎11)も報告されています。

    残り1,510文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top