【診断遅延例が年間約100例ある】
先天性股関節脱臼という用語は,発育性股関節形成不全(DDH)と呼称が変化した。1970年代の石田らによる啓発運動が奏功し,わが国におけるDDHの発症率は激減した。ところが,近年歩行開始後に脱臼が発見される診断遅延例が年間約100例あることが,服部らによる多施設研究調査で明らかとなった1)。
この事態を憂慮し,乳児健診においてどのような児をピックアップするべきかを小児整形外科医を中心に議論した結果,乳児股関節健診推奨項目2)が完成した。
推奨項目は以下の5つの項目である。①股関節開排制限は1項目で二次検診の受診を要する。以下4つの項目は,2つが該当すると二次検診受診を勧められる。②大腿・鼠径皮膚溝の左右差,③女児,④家族歴,⑤骨盤位分娩,である。
この③④⑤の項目は,Hundtら3)による約150万児のメタアナリシスによるリスクファクターと同じである。
この推奨項目は,朝貝らの努力により厚生労働省保健課から全国の市町村に事務連絡された。今後,乳児健診に推奨項目を使用する自治体の増加と,それに伴う二次検診受診者数の増加が予想される。
日本小児整形外科学会では健診委員会を組織して,日本のDDH健診・検診体制の改善,強化を検討している。
【文献】
1) Hattori T, et al:J Orthop Sci. 2017;22(1):121-6.
2) 日本小児整形外科学会:乳児股関節健診推奨項目. [http://www.jpoa.org/公開資料/]
3) de Hundt M, et al:Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2012;165(1):8-17.
【解説】
藤原憲太 大阪医科大学整形外科講師