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マルチプレックス遺伝子診断の特徴,抗菌薬適正使用への活用のコツは?

No.4991 (2019年12月21日発行) P.52

鈴木大介 (藤田医科大学医学部感染症科)

三河貴裕 (山梨県立中央病院総合診療科・感染症科副部長)

登録日: 2019-12-24

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  • 薬剤耐性菌の増加が世界的な問題となる中,新しい迅速検査法・遺伝子検査法が開発され,抗菌薬適正使用への活用が期待されていますが,マルチプレックス遺伝子診断の長所・短所,抗菌薬適正使用への活用のコツについてご教示下さい。
    山梨県立中央病院・三河貴裕先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    鈴木大介 藤田医科大学医学部感染症科


    【回答】

    【MRSA菌血症への抗MRSA薬迅速使用に有効。髄液・喀痰への拡張が期待される】

    現在,わが国には,FilmArray®とVerigene®の2つがあります。当院は2018年7月に保険適用が通ってすぐにFilmArray®を導入しました。

    本システムは血液培養検体を対象とし,迅速multiplex ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法で,hand on time 5分,血液培養陽性から1時間で起因菌と耐性遺伝子を同定できます。ただし同定可能な菌種が限られ,また耐性遺伝子もmecAやKlebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC)は検出できますが基質拡張型β-ラクタマーゼ(extended spectrum β- lactamase:ESBL)は検出できません。

    先行研究では抗菌薬適正使用チームと本システムの併用で不要なバンコマイシン(VCM)投与が減少したり1),適切な抗菌薬へのスイッチが早くなることが2)示されていますが,研究によって結果が異なる上,死亡率の改善はみられていません。KPCが少ないわが国では,グラム陰性菌では菌種よりもESBLかambler molecular class C(Amp C)過剰産生があるかないかが抗菌薬選択に重要です。一方グラム陽性菌では,特にブドウ球菌がmecAを持っているかどうかで,VCMに代表される抗メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)薬を必要とするかどうかが変わります。

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