【陽性率はウイルス性肝炎由来の肝細胞癌とよく似ている】
生活習慣の変化に伴い脂肪肝患者は増加傾向にあり,わが国では人口の約20%が,欧米では約20~30%が脂肪肝で,その中の約10~20%がNASHに進展し,肝硬変まで進行すると2.4~12.8%の確率(年間,1~3%)で肝細胞癌を発症します1)。わが国の臨床研究で209例のNASH/脂肪肝由来の肝細胞癌を調べたところ,AFPの陽性率は約50%(10以上100未満が27.9%,100以上が20.6%,単位はng/mL),PIVKA-Ⅱの陽性率は約68%(40以上100未満が11.8%,100以上が56.4%,単位はmAU/mL)で,ややPIVKA-Ⅱの陽性率が高い傾向にありますが,ウイルス性肝炎由来の肝細胞癌とよく似ていました2)。
ウイルス性肝細胞癌は,80~90%が肝硬変由来ですが,NASH/脂肪肝由来の肝細胞癌は男性では半数以上が非肝硬変から発症しているという疫学データ(わが国,海外ともに)があります。また,海外ではウイルス性肝細胞癌と同様に,GALADスコア(性別,年齢,AFP-L3,AFP,PIVKA-Ⅱの組み合わせ)も高く評価されています3)。NASH/脂肪肝からの発がんはウイルス性肝炎と比べ発症率が低いことがわかっていますが,いったん発症した場合は5年で再発率が約70%とウイルス性肝炎患者と同等の再発率であることが最近の研究で明らかとなっています(図1)。
また予後についても発がん症例ではNASH/脂肪肝発がん症例とウイルス性肝癌症例で同等です。日常診療の場では,NASH/脂肪肝患者においても(特に発がん症例では),腫瘍マーカーと腹部超音波検査などによる定期的な肝細胞癌のサーベイランスが必要と思われます。
【文献】
1) Quentin M Anstee, et al:Nature review. 2019.
2) Tokushige K, et al:J Gastroenterol. 2016;51 (6):586-96.
3) Fox R, et al:Br J Cancer. 2014;110(8):2090-8.
【回答者】
三善英知 大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座教授
鎌田佳宏 大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座准教授