喉頭癌は発生する亜部位により声門上癌,声門癌,声門下癌にわけられる。声門癌は早期に嗄声を自覚するため腫瘍の存在を疑いやすいが,声門上癌では早期の症状に乏しく,リンパ節転移による頸部腫脹が契機で診断されることも少なくない。
腫瘍の存在を確認するために喉頭内視鏡は必須である。腫瘍が疑われれば十分な表面麻酔の後に生検を実施し,診断の確定を行う。喉頭内視鏡下に声帯運動の状態や腫瘍の進展範囲を詳細に観察する。頸部造影CTで腫瘍の深部浸潤の程度やリンパ節転移の有無を評価し,胸部CTやFDG-PETなどを行い遠隔転移の有無を確認する。これらの所見を統合しTNM分類に準じてステージングを行う。また,喫煙・飲酒歴のある患者が多く,他の頭頸部癌や食道癌を重複することが少なくないため,他の頭頸部領域の観察や上部消化管内視鏡検査を行う。
喉頭癌治療は大きく手術,放射線単独療法(RT alone),化学放射線療法(chemoradiation therapy:CRT)にわけられる。手術についても喉頭温存手術(経口的切除,喉頭部分切除術,喉頭亜全摘術)と喉頭全摘術にわけられる。
早期喉頭癌ではRT aloneや喉頭温存手術(主に経口的切除)による積極的な喉頭温存治療を選択する。経口的切除の最大のメリットは治療期間の短さになるが,特に声門癌の場合,切除範囲が大きいと,治療後の音声機能が不良となりやすい。一方,RT aloneは約1カ月半の治療期間を要するが,治療後の音声機能は安定している。
局所進行喉頭癌では喉頭温存治療の非適応となる症例が存在する。たとえば,明らかなT4a例では喉頭全摘術が標準的であり,CRTの適応は手術拒否例とする。また,高齢者やPS(performance status)低下例では,CRTの完遂が困難であったり,治療後の嚥下障害が高度となりうるため,T4aでなくとも喉頭全摘術を行うほうがよいケースがある。CRTは総線量を70Gyとし,シスプラチン(CDDP)100mg/m2を3週ごとに投与するのが標準的である。
頸部リンパ節転移を生じている場合は,当然ながら治療の対象とする必要がある。原発巣に対し手術を選択するのであれば,頸部郭清術を併施する。原発巣に対しCRTを選択するのであれば,転移リンパ節も照射範囲に含める。
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