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再生医療と美容医療の円滑な発展を願って[エッセイ]

No.4994 (2020年01月11日発行) P.63

坪井良治 (東京医科大学皮膚科学分野主任教授)

登録日: 2020-01-12

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再生医療というと致死的な、あるいは代替治療法がない疾患を対象とするイメージが強いが、美容医療に応用することもできる。見かけの問題は生死には関係しないが、本人の生活の質に及ぼす影響は大きい。顔だちや頭髪の若返りは、男女を問わず関心が高く、なんとか若い時代に戻したいと願うのは、誰もが抱く願望である。頭髪に関しては、これまでは育毛の内服薬や外用薬を使用する、あるいはウィッグを使用するのが定番であった。毛髪量を回復させる方法のひとつとして、我々のグループは、後頭部の細胞を培養して増やし疎毛部に注射して毛髪量を回復させるという臨床試験を実施した。幸い良い結果が得られ、近日中に結果を発表予定である。国内ではiPS細胞を用いる方法も検討されているが、自分の細胞を用いる点で実現可能性は最も高いと確信している。

臨床試験を実施するに当たり、我々は再生医療新法の下で忠実に行っているが、定期的な書面での報告が多すぎる。ルール破りの報告が最近あったので仕方ないとは思うが、全体的にもう少し簡素化できないかと思う。ここまで5年余りやってこられたのは企業の支援があったからで、医師主導といいながら、これだけ綿密な臨床試験を医師だけで完遂するのは人的にも財政的にも難しい。

これまで日本の美容医療は医師の裁量に任される部分が大きく、医学的に有害なあるいは効果のない治療を止めさせることが難しかった。我々にはガイドラインを作成して標準的な治療法を啓発するしか方法がないが、美容医療にもある程度の法的な縛りは必要であると思う。再生医療や美容医療を実施すれば、その行為により時に身体的・精神的障害を残すことがある。医師に賠償責任が生じたときに損害賠償金を支払ってくれる保険があれば心強い。最近これらが実現したことは喜ばしいことで、医師は萎縮せずに治療を進めることができる。これらの分野が発展するためには、促進させるための制度とルール破りを防ぐための制度、損害賠償を保障するための制度が三位一体となって働くことが重要であるとつくづく思う。

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