中央社会保険医療協議会・総会は1月24日、2020年度診療報酬改定に関する公聴会を開き、公募者の中から公益委員が選んだ医療保険者、医療従事者、患者など10人から意見を聞いた。医療保険者らは、医師の働き方改革の取り組みを診療報酬で評価する対象施設を限定することや、「機能強化加算」における患者への事前説明の要件化などを要望。病院関係者は2次救急を担う中小病院への配慮や、「機能強化加算」と「地域包括診療加算」の要件緩和などの実施を求めた。
医師の働き方改革では、病院の立場から意見を述べた浜松医科大学医学部附属病院の関係者が、診療報酬による救急病院勤務医の働き方改革への特例的対応(診療報酬0.08%引き上げ分)を評価したが、その一方で、「中小病院が救急から撤退すれば、基幹病院の負担が増加する」との懸念も表明。「中小規模の病院が救急から撤退することのないような評価をお願いしたい」と2次救急を担う中小病院の手厚い評価を促した。専従・専任要件の緩和や「医師事務作業補助体制加算」の見直しも要請した。
これに対して中小企業の立場から発言した商工会議所の関係者は、働き方改革の推進にあたって、医療費の増加を必要最小限に抑制する視点も必要だと主張。「医療機関自らがマネジメント機能を発揮することが重要であり、医師労働時間短縮計画に基づいた取り組みをしっかりやってもらい、一定の取り組みがあった病院に限り、評価するべきだ」との認識を示した。
医療機能の分化と連携では、健康保険組合連合会の関係者が、「急性期一般入院料1」の要件厳格化による急性期病床数の適正化や、「機能強化加算」の算定に際して、かかりつけ医機能などの患者への事前説明を要件化することなどを要望。診療所の関係者は、「機能強化加算」や「地域包括診療加算」は、「一部の診療科以外では届出のハードルが高い」として要件緩和を訴えた。
オンライン診療の関係では、難病の患者支援団体の関係者が、地理的な事情から専門医の受診が困難な難病患者が、かかりつけ医の下で専門医のオンライン診療を受ける「D to P with D」の普及を強く求めるとともに、「通信機器の要件で実施できない医療機関が出ないような配慮をお願いしたい」と要請した。
意見陳述を受けて支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「限られた財源の中でも国民皆保険制度を守っていくことが1号側、2号側の共通理念であり、そこに立てば必ず正しい結論が得られると思う。今日の意見を参考に残された時間を協議していきたい」と2月上旬の答申に向けた決意を表明。診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)も、「地域医療は一度壊れると、再構築は困難であり、守り続けていかなければならない。本日の意見に真摯に向き合い、国民のために地域医療をしっかり守り、より良い社会に進むように役立てていきたい」と述べた。