慎重な性格のパーキンソン病の患者と異なり,進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)の患者は無鉄砲で,1人で歩けば転ぶのがわかっているのに,「ちょっと待って」が待てず1人で勝手に歩いて転倒することがよくあります。このようなPSPの患者の治療法を教えて下さい。
埼玉県総合リハビリテーションセンター・市川 忠先生にご回答をお願いします。
【質問者】
藤本健一 自治医大ステーション・ブレインクリニック
【バランス訓練などのリハビリとキューを用いた代償手段を活用】
PSPの転倒は,姿勢不安定(姿勢反射障害),すくみ足の要因が挙げられます。姿勢不安定は国際パーキンソン病運動障害学会のPSP臨床診断基準の主要兆候になっています。また,すくみ足も同診断基準で主要兆候の無動に発症3年以内に出現する進行性のすくみ足が項目となっています。PSPでは,さらに認知機能低下により,転倒リスクの自己評価と自己対応が困難です。
転倒予防のアプローチは,姿勢反射障害,すくみ足の身体機能障害へのものと認知機能低下に対するものにわけられます。身体機能へのアプローチとしては,バランス訓練,筋力トレーニング,体幹可動性の向上などの身体機能の維持や向上を目的としたものや,キューを利用してのすくみ足の改善や歩行器や歩行車を利用した代償的アプローチがあります。
残り706文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する