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【識者の眼】「生理が毎月あるのは過去の話に?〜最近のピルはココが違う〜」柴田綾子

No.5001 (2020年02月29日発行) P.61

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-02-26

最終更新日: 2020-02-25

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ピルの効果は「確実な避妊や生理痛の改善」です。近年ピルと月経の領域で、従来の常識をくつがえすような商品が発売されています。これまでは、ピルを飲んでいたとしても毎月月経が来るのが普通でした(ただし毎月の月経の出血量や痛みはかなり軽減します)。ところが近年、ピルを使って月経の回数自体を減らそうという流れが出てきました。具体的には、月経を2〜3カ月に1回、1年に1〜4回しか来ないようにするピルです。

日本で2017年に発売されたヤーズフレックス配合錠(一般名:ドロスピレノン・エチニルエストラジオール)は、120日間連日内服することで、その間は月経を止めるようにすることが可能です。2018年に発売されたジェミーナ配合錠(一般名:レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)は、77日間連続で内服ができます(両剤ともに、人によっては不正出血が起きたり、途中で月経が来てしまうことがあります)。

このような連続投与のメリットとしては、月経の回数が減ることにより月経前や月経中の体調不良を劇的に減らせるということです。ピルは女性ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンが入っており、①排卵を抑制し、②子宮内膜を薄くすることで、避妊効果、月経痛の改善、月経量の減少が得られます。さらに月経の回数自体が減ることで月経前症候群(月経前の精神症状や身体症状)、月経困難症(月経中の腹痛・腰痛・頭痛などの随伴症状)の症状自体をなくすことができるのです。

「ピルをそんなにずっと飲んで副作用は大丈夫?」「生理が数カ月来なくて大丈夫?」という心配に対しても、研究で問題ないことが分かっています。

アメリカで行われたピル84日または365日連続投与群と従来の21日投与群を比較した研究では、血栓症の発症率に有意差がありませんでした(1000人/年当たり1.44人 vs 1.09人)(Li J, et al:JAMA Intern Med. 2018;178(11):1482-8.)。また、ピルを止めてから月経が回復する期間は平均1カ月で従来のピルと差がなく、連続内服中の血圧・脂質変化も従来群と有意差がありませんでした(Mendoza N, et al:Eur J Contracept Reprod Health Care. 2014;19(5):321-39.)。

実は1970年代にピルの連続投与について研究報告されており(Loudon NB, et al:Br Med J. 1977;2(6085):487-90.)、2003年には実用化されていました。欧米では2000年初頭から連続投与が普及してきましたが、日本では2017年に保険適用となりました。これから日本でも、女性が自分のスケジュールに合わせて生理の回数を減らし生理中を快適に過ごす時代がやってくるかもしれません。

実際の処方例と服用方法

①ヤーズフレックス配合錠:1日1錠、一定の時刻に毎日内服。服用から24日間は出血の有無にかかわらず服用。内服25日目以降、連続3日間の出血があった場合は、4日間休薬。120日間連続して服用した後は4日間休薬。

②ジェミーナ配合錠:1日1錠、一定の時刻に毎日内服。(A)77日間連続内服し、その後7日間休薬、(B)21日間連続内服し、その後7日間休薬。飲み方はAとBの方法どちらも可能。

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[産婦人科]

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