SUMMARY
こどもの予防医療において,事故を予防することと健康的な生活習慣を身につけることが特に,重要である。こどもへの介入を考える際には,害を大きく見積もる必要がある。
KEYWORD
集団アプローチ(またはポピュレーション・ストラテジー)
予防的介入における,ハイリスクアプローチに対する手法。リスクの高低にかかわらず,集団全体に働きかけることで,全体の疾病罹患率等を減少させること。
PROFILE
名古屋大学卒業。筑波大学博士後期課程修了。医学博士。家庭医療専門医。総合内科専門医。2018年より国立病院機構霞ヶ浦医療センター総合診療科。
POLICY・座右の銘
修文練武
大人で予防医療といえば,中心となるのは悪性腫瘍のスクリーニングと生活習慣病,心血管疾患の予防である。こどもは,今目の前にある生命を脅かすことへの対処と,将来やってくるであろう青年期に向けた健全な生活習慣の獲得をしなければならない。予防接種もこの範疇に入るが,本稿では予防接種については言及しない。
こどもの死亡原因としては,「不慮の事故」が長年,第1位であったのが,年々減少している。それでも1~9歳では第2位,0歳,10~14歳では第3位と,依然として上位にある(表1)1)。不慮の事故死の中では,交通事故,窒息,溺水が圧倒的に多い。これらはすべて家族に対する予防的教育が可能なものである。たとえば,交通事故に関して言えば,2000年から6歳未満のこどもに義務づけられているチャイルドシートの着用率は依然として70.5%にとどまっている2)。また2008年には13歳未満のこどもの自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務とされたが,ヘルメットを必ず着用させる親は56.9%にとどまっている。しかも50.9%はこどもにヘルメットを着用させることの努力義務があることを知らない3)。自転車乗用中の事故による死亡は頭部外傷が6割を占め,ヘルメットを着用していないと致死率が2.5倍になる4)という情報を親に提供し,こどもへのヘルメット装着を促すことは,医師としての責務である。