社会保障審議会医療保険部会は2月27日に開かれ、後期高齢者の窓口負担や現役並み所得の判定基準のあり方などについて議論した。委員からは、高齢者の医療費負担の見直しを検討するにあたって、現役世代の負担の軽減などについても考慮する必要があるとの意見が相次いだ。
昨年12月に公表された政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告は、後期高齢者の窓口負担について、一定所得以上の場合は2割、それ以外は1割とすることを提案。一方、3割負担となる現役並み所得の判断基準に関しては、経済財政諮問会議の改革工程表で、「骨太の方針2020」に向けて関係審議会で検討する方針が打ち出された。
厚生労働省が部会に提出した資料によると、1人当たり医療費は年齢に比例して増加し、自己負担も医療費が高額になる80歳以降で最も高くなるが、保険料負担は20歳代後半から59歳未満の現役世代が最も重い。また、後期高齢者医療制度における給付費の約5割は公費で賄われているが、現役並み所得の高齢者に公費負担はなく、その減少分には現役世代の支援金が充当されているため、現役世代並み所得の判定基準の見直し次第では、現役世代の負担がさらに増加する可能性もある。
こうした背景から、保険者の委員からは一定所得以上を2割負担とする案を評価しつつも、現役世代の負担増を懸念する声が上がった。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「高齢者の負担能力に応じた負担を基本としつつ、現役世代の負担軽減につながる仕組みにするべきだ」と主張。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「(現役並み所得者の拡大による)公費の減少分が現役世代の負担にならないことが大事であり、現役世代の負担にも配慮してほしい」と訴えた。
このほか、「低所得者対策や高額療養費制度もあり、2割負担となっても、負担額が必ずしも2倍になる訳ではないことについて、正しい理解を広めることが必要だ」(佐野委員)など、2割負担になる高齢者に対する周知活動の重要性を指摘する意見も目立った。