No.4710 (2014年08月02日発行) P.75
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-28
恐ろしい経験をした。自分の記憶が自分の脳内には存在せず、外部に蓄積されていた、という経験だ。映画『トータル・リコール』なみに、記憶が出し入れされる恐怖を味わったのだ。それも集団で…。
それは、ある日の朝に始まった。手書きのスケジュール帳で予定の管理をおこなっているのだが、ふと見ると、書いた記憶のない内容が書き込まれている。
場所のメモだけで用件は書かれていない。いつ書き込まれたのかもわからない。しかし、どうみても、愛くるしい丸文字(!)は私の字だ。
一度スケジュール帳をなくして、むちゃくちゃ困って以来、2週間ごとにスケジュール帳をスキャンして保存している。前回のスキャンを見てみると、そこにはまだ書き込まれていない。
ということは、最近の書き込みである。記憶がなくなるほど飲む機会が一度だけあった。その時の幹事であった先生に尋ねてみたらわかるはずだとメールを送った。
そしたら返事が来た。「私のスケジュール帳にも同じ日時で、同じ場所が書かれています。自分の字ですが、書いた記憶はありません」。ミステリーだ…。
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