No.4739 (2015年02月21日発行) P.74
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-09
体細胞にストレスをかけて培養していたら、多能性の幹細胞がディッシュの中に見つかった。それは極めて低い確率でしか生じない現象だったかもしれないし、ES細胞の誤った混入だったかもしれない。
その結果を有名な先生に伝えたら、ぜひ一緒に研究しましょうと言われた。しかし、再現できない。どんどん指示されるいろいろな実験。ウソをつくしかないと思った。しかたなくES細胞を使って実験をした。それでもうまくいかない時は、適当なデータを使い回した─。
もちろんフィクションである。しかし、このシナリオなら、私には、一応の理解が可能だ。もちろん、決してしてはいけないことではあるが、小心な若手研究者ならありえないことではない。
調査委員会は、STAP細胞とされていたものはES細胞の混入であると結論した。しかし、研究現場の状況から、混入させたのが誰であったかは特定できなかったという。厳密にはそうだろうけれど、物事には蓋然性というものがある。
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