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頭部白癬[私の治療]

No.5012 (2020年05月16日発行) P.41

常深祐一郎 (埼玉医科大学皮膚科教授)

登録日: 2020-05-17

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  • 頭部白癬は白癬菌が毛髪に感染したもので,鱗屑や脱毛がみられる頭部浅在性白癬と,毛包内に感染した毛髪がとぐろを巻いて黒点に見えるblack dot ringworm,毛包周囲に強い炎症を伴うケルスス禿瘡がある。頭部白癬は,Trichophyton tonsurans(ヒトから)やMicrosporum canis(ネコから),T. verrucosum(ウシから),M. gypseum(土壌から)など,多彩な菌種が原因となる。

    ▶診断のポイント

    病変部に真菌が存在することを証明することが必須である。見た目の臨床像だけでの診断は困難である。頭部白癬では直接鏡検での検出率が他の病型より低いことと,原因菌が多彩であることから培養も併用する。検体採取は,容易に抜ける毛髪を抜き,黒点(black dot)があれば押し出す。検体をスライドグラスに載せ,カバーグラスをかけて,隙間からKOH溶液を滴下する。アルコールランプやホットプレートなどでゆるやかに加熱する。検体が溶解したところで,顕微鏡で観察する。毛髪は押しつぶすと菌要素がバラバラになるため,そのまま観察する。顕微鏡の設定は,絞りは絞って,コンデンサーは下げる。全体を検索するには対物レンズは10倍がよい。胞子の寄生形態(胞子の大小や,毛内寄生か毛外寄生か)を見るには絞りを開いて,コンデンサーを上げて40倍対物レンズで観察する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗真菌薬内服を行う。外用抗真菌薬は,刺激により悪化することがあるので使用しない1)。特に炎症の強いケルスス禿瘡では,的確に診断し早期に治療を開始しないと永久脱毛を残すことがある。

    経口抗真菌薬にはテルビナフィン(TBF)とイトラコナゾール(ITCZ)がある。白癬菌に対しては基本的にTBFが第一選択であり,ITCZは第二選択となる。ただし,Microsporum属に対してはITCZのほうがよい。TBFは吸収が良好な薬剤であり1日1錠(125mg)を連続投与する。肝機能障害と血球減少,横紋筋融解に注意しながら使用する。ITCZは,吸収効率が低い薬剤であるので分服せず1回で内服する。また,酸性下で脂肪分があるほうが吸収が増すため,食直後に内服する。肝機能障害と血球減少に注意する。多数ある併用禁忌薬にも注意する。具体的な検査項目は,血算(分画含む),生化学(GOT,GPT,LDH,ALP,γ-GTP, 総ビリルビン,CK)で,いずれの薬剤も毎月検査を行う1)

    投与期間は,症例ごとに起因菌や重症度などを勘案しながら治療薬と投与量を決定し,治療反応をみながら,用量を見直したり,投与期間を適宜調整したりするのがよい。頭部白癬では比較的長期の内服が必要になり,2~3カ月を要することが多い。

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