腱板である棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋腱の損傷であり,断裂の頻度が高いのは棘上筋である。また,断裂の原因として,外傷によるものと加齢等の変性によるものにわかれる。一般的に加齢に伴い有病率が増加する。しかし,断裂が認められても痛み等の症状を認めない無症候性の腱板断裂が存在するため,治療には注意を要する。
診察では自動,他動の可動域を確認し,肩の可動域制限(左右差で確認する),自動で挙上可能かを確認する。また,挙上外旋,内旋での筋力低下の有無,負荷をかけた際の疼痛,インピンジメント徴候を確認する。一方で,頸椎症性筋萎縮症等の頸椎疾患によっても肩の挙上障害が生じるため,上腕二頭筋の筋力が保たれているかを確認する必要がある。
次に画像診断として,腱板の広範囲損傷であればX線でも骨頭の上方化の有無等で確認可能であるが,それ以外の場合,X線では腱板断裂の診断が難しいため,確定診断としてMRI撮影を行う。MRIではT2強調像での高輝度領域の有無で腱板断裂の診断を行う。小さい断裂や部分断裂の場合,見逃す危険性もあるため,撮像された全スライスを確認することが重要である。また,断裂部の矢状面,冠状面での広がりと腱板筋の脂肪変性の有無を確認する。
若年で急性の外傷性の大きい断裂を除き,まずは保存療法を行う。保存療法では内服薬,注射,リハビリテーションを行うことにより,疼痛の緩和,インピンジメント徴候の改善,筋力の改善が得られれば,そのまま保存療法を継続していく。しかし,保存療法で改善が得られず,患者のニーズとして保存療法以上の症状改善を望む場合,手術を行う。一方,若年で急性の外傷性の大きい断裂の場合,断裂した腱板の自然治癒は得られず,経時的に断裂サイズは大きくなり,筋の脂肪変性が悪化していくため,早期に手術を行ったほうがよいと考えられる。
手術を行う際は,術後の合併症の発生を低減させるような手術方法を選択していく必要がある。腱板を修復する場合,断裂サイズが大きく,筋の脂肪変性も進行している場合,修復を行うと再断裂の危険性が高く,大腿筋膜の移植,腱移行術等の工夫を追加で行う必要があると考えられる。また,高齢者で肩の自動挙上が不能な偽性麻痺肩では,リバース型人工肩関節置換術がよい適応になると考えられる。
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