社会保障審議会医療保険部会は7月9日、意見の取りまとめ時期を年末に延期し、次回以降、具体的議論に入っていくことを了承した。政府の全世代型社会保障検討会議が今夏に予定していた最終報告の取りまとめを年末に先送りしたことに対応した。医療保険部会は、検討会議が昨年末にまとめた中間報告を踏まえ、医療制度改革メニューのうち、▶後期高齢者の自己負担割合のあり方、▶現役並み所得の判断基準の見直し、▶紹介状なしで大病院外来を受診した際の定額負担の拡大、▶薬剤自己負担の引き上げ―などを検討している。
取りまとめ時期の延期について異論は出なかったが、委員からは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う保険財政や医療機関経営の悪化を危惧する声が相次いだ。佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、経済情勢の悪化による賃金・賞与の減少で保険財政は危機に瀕しているとし、「後期高齢者の負担見直しを含む制度の見直しをこれ以上先送りすることがないようにお願いしたい」と釘を刺した。平井伸治委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長/鳥取県知事)は、感染患者を受け入れている医療機関だけでなく、一般医療機関の経営も悪化している現状を憂慮。「新型コロナの関係で状況が変わっていることを織り込みながら慎重に検討することも私たちの使命だ」と述べた。
また部会は同日、「匿名レセプト情報等の提供に関する専門委員会」の設置を了承した。健康保険法等の一部改正(以下、改正法)で、今年10月1日から匿名化されたレセプト情報やDPCデータの第三者提供が可能になる。改正法は、「相当の公益性」がある調査・研究などに利用される場合に限り、第三者提供を認めると定めており、医療保険部会の下に設置される専門委員会は、今後、匿名データの提供に関するガイドラインを検討するほか、データの提供申出があった案件ごとに、その可否を審査する。社保審介護保険部会の下にも同様の専門委員会が設置される予定で、介護データベースのデータと連結して利用ができる状態での提供申出があった場合は、両専門委員会が合同で審査することになる。