捻挫とは,外力によって関節運動が強制され,関節を構成している靱帯や関節包などの軟部組織が損傷した状態のことで,関節面相互に位置関係の乱れのないもののことである。よって,骨折や軟骨損傷がある場合は捻挫とは言わない。重症度別の的確な治療が必要で,それを怠ると,関節不安定性や変形性関節症などの重大な後遺症を生じることがある。
問診で,どのような受傷機転であったのかを詳しく聴取する。スポーツなのか歩行中の転倒なのか,関節がどのような方向に外力を受けたのかを聴き取る。続いて,視診,触診ではどの部位に疼痛があるのか,また,圧痛点はどこにあるのかを詳細に調べる。そして,可能な範囲で関節を動かし,どの方向の運動で疼痛が増大するかを調べる。ストレス検査を行って関節不安定性を調べることが重要である。画像検査では,まず単純X線検査を行い,骨折の有無を確認する。場合によってはCT,MRI検査を追加する。四肢関節の捻挫では,エコー検査がきわめて有用である。
捻挫の治療においては,その重症度を正しく把握することが重要である。関節包などの伸張だけで関節不安定性のないⅠ度損傷,靱帯の部分断裂であって軽度の関節不安定性があるⅡ度損傷,靱帯の完全断裂であって重度の関節不安定性のあるⅢ度損傷,に分類する場合が多い。下肢においては,受傷直後に荷重歩行ができればⅠ度損傷で,荷重歩行ができないほどの疼痛があればⅡ,Ⅲ度損傷と考えてよい。膝関節捻挫ではMRI検査が有効であり,これによって損傷靱帯とその程度がわかり,治療方針をたてることができる。また,膝関節捻挫ではストレス検査が有効で,前方引き出しテストで前十字靱帯損傷を,後方引き出しテストで後十字靱帯損傷を,内反ストレステストで外側側副靱帯損傷を,外反ストレステストで内側側副靱帯損傷を診断することができる。他の関節ではエコー検査が有用であり,損傷程度を判定することができる。足関節ではストレスX線検査が有用で,距骨傾斜角が15°以上の場合,前距腓靱帯,踵腓靱帯の完全断裂を疑う1)。
Ⅰ度損傷に対してはアイシング,湿布や弾力包帯固定で十分に対処できる。Ⅱ度損傷に対しては基本的には保存的治療がよい。2~4週間程度のギプスなどによる関節固定が適当である。Ⅲ度損傷に対しては,よく本人と話し合い,高いレベルをめざすアスリートであれば外科的治療を選択する。
処方は,基本的には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が中心である。一手目として,消化器への副作用の少ないアセトアミノフェン類を用いる。効果のない場合はロキソプロフェンがよい。ただし,消化器への副作用を考慮し,H2受容体拮抗薬などを併用するとよい。
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