日本医師会の中川俊男会長は8月5日の定例記者会見で、大阪府の吉村洋文知事がポビドンヨードを含むうがい薬が「コロナに効くのではないか」として、ポビドンヨードうがい薬によるうがいの励行を府民に呼びかけ、販売店に消費者が殺到するなどの混乱が生じた問題に言及。「こういう発信力の強い方がいろいろな発言をすると(医薬品が)店頭から消えてしまうということが起こる。国民に極力混乱がないようにすべき」と苦言を呈した。
吉村知事の発言は、ポビドンヨードを含むうがい薬の使用で新型コロナ軽症患者の唾液PCRでの陽性率が低下した、という大阪はびきの医療センターの研究結果(8月4日発表)を受けたもの。同研究は大阪府・大阪市が協力する形で、宿泊療養者41人を対象に実施された。
中川会長は「N数も少なく、エビデンスとして十分ではない」と、この研究だけでは根拠不十分との見解を示しながら、「知事は感染者数の急増で非常に苦労されている。その中で明るいニュースとして発言されたのだと思う。私は不適切だと責めるつもりはない。日医の立場としては『これから検証して、しっかりやっていきましょう。落ち着いていきましょう』と申し上げるにとどめたい」とした。国民に対しては「慌てて行動しないように」と呼びかけた。
会見に同席した神村裕子常任理事も「サイエンスは他の研究者が再現して同じような結果が出せるかに重きを置いている。1人の研究者が一報を出した時点ですぐに飛びつく(のではなく)、どんな素晴らしい結果を目にしても『ちょっと待てよ』というのが科学的な対応」と述べ、知事の発言に疑問を投げかけた。