当時、死の宣告を意味した小児糖尿病の診断を受け、インスリンの発見により生へと蘇った多くの患者と家族の喜びを描く。
(シア・クーパー/アーサー・アインスバーグ著、門脇 孝 監、綱場一成 訳、日経メディカル開発、2013年刊)
本書は、トロント大学のフレデリック・バンティングとチャールズ・ベストによる1922年のインスリンの発見を縦糸とし、小児糖尿病患者エリザベス・ヒューズの一生を横糸に、インスリンの発見から製剤化までの苦難の歴史と、患者たちがインスリンを手にするまでの困難さを描いている。
特に、製剤化に精力的に取り組んだ某製薬会社の努力が詳述されている。いかにしてブタやウシの膵臓を確保し安定した大量生産を可能にし、1923年に最初のインスリン製剤アイレチンを発売したか、その熱意と努力に敬意を表する。なお、インスリン発見の経緯やバンティング医師のノーベル賞受賞をめぐる周囲との確執については本書にも述べられているが、マイケル・ブリス著(堀田 饒 訳)『インスリンの発見』などを参照されたい。
残り332文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する