【質問者】
髙橋 祐 がん研究会有明病院 肝胆膵外科部長
【ICG蛍光法は①胆道造影,②肝癌の同定,③肝区域の描出,④臓器血流の評価,に応用可能】
肝胆膵外科領域では,ICGは肝機能検査用の試薬として50年以上使用されてきましたが,2008年のAokiらによる報告1)が端緒となり,その蛍光特性(760nm前後の励起光で近赤外領域の蛍光を呈する)にも注目が集まるようになりました。
筆者らは,ICGの胆汁排泄性に着目し,胆囊摘出術で胆管に造影用のカテーテルを留置せずとも,ICGを事前に静注するだけで肝外胆管の蛍光像を得る技術(蛍光胆道造影法)を開発しました2)。この方法は,X線撮影による従来の術中胆道造影の役割を一部代替する技術として,特に欧米で臨床応用が進められています。
また筆者らは,蛍光胆道造影法を開発する過程で,ICGが静注後に肝細胞癌のがん組織および転移性肝癌周囲の非がん部肝実質に滞留することを発見し,この機序を腫瘍の術中蛍光イメージングに応用できることを報告しました3)。本技術は,特に視触診が行いにくい腹腔鏡手術において,肝表面に近い腫瘍の位置を簡便に確認する手段として広く用いられはじめています。
前述したAokiらの論文1)は,「ICG溶液を超音波ガイド下に門脈枝に注入し,蛍光イメージングで肝区域境界を描出する」技術の報告でした。その後,ICG投与法の工夫や撮像装置の進歩4)が加わり,現在では腹腔鏡下肝切除を含む幅広い術式で蛍光イメージングを用いた肝区域同定法が活用されています。
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