【ホルモン補充療法は変形性膝関節症のリスク低下と関連している】
変形性関節症(osteoarthritis:OA)は高齢者に多く,痛みや可動域制限の原因となる。OAの主要な病因は加齢であるが,それに加えてOAは女性に多く,特に閉経後に増加するため,病態へのエストロゲン欠乏の関与が想定されてきた。
ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)には関節痛を改善する効果があることが,既に大規模研究で明らかにされている1)2)。HRTがさらに股・膝・手関節のOAリスクを低下させる可能性も示唆されていたが,閉経後骨粗鬆症とは異なり,必ずしも一致した見解が得られていなかった。
本研究では,韓国の国民健康調査(Korea National Health and Nutrition Examination Survey:KNHANES)の2009~12年データ(n=4766)を用いて,HRT(1年間以上の女性ホルモン製剤使用)と膝OA〔過去3カ月間に20日以上の膝痛もしくはKellgren-Lawrence(KL)分類2度以上〕との関連について検討した3)。膝OAに対するHRTの寄与に関する粗オッズ比(95%信頼区間)は0.59(0.45~0.78),年齢・BMIその他の因子による調整を行った場合のオッズ比は0.70(0.50~0.99)であった。HRTの副効用のひとつとして,膝OAの予防が挙げられる可能性が示唆された。
【文献】
1) Barnabei VM, et al:Obstet Gynecol. 2005;105(5 Pt 1):1063-73.
2) Welton AJ, et al:BMJ. 2008;337:a1190.
3) Jung JH, et al:Menopause. 2018;26(6):598-602.
【解説】
寺内公一 東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授