【閉鎖陰圧療法(NPWT)による創傷治癒の変遷】
糖尿病性壊疽,褥瘡などの難治性皮膚潰瘍に対する治療においては,感染・壊死を伴った創の状態から外科的デブリードマンや保存的な創処置を行うことで,健康な肉芽組織をいかに早く形成して治癒に向かわせるか,という点が重要視されている。
以前はデブリードマン後に頻回の洗浄やガーゼ交換を行い,数週間から場合によっては月単位の時間を要していた。しかし,1993年に創部を閉鎖して陰圧にする閉鎖陰圧療法(negative pressure wound therapy:NPWT)が報告されて以来1),このNPWTを用いることで創治癒の期間が劇的に短縮され,患者・医療者の負担の軽減のみならず,入院期間の短縮にもつながることとなった。NPWT器具を用いた治療法は,わが国でも2010年に保険承認され,以後,形成外科・皮膚科領域のみならず,多くの外科系医師にも用いられている。
さらに近年ではNPWTに持続洗浄法を加えることで,感染や異物が残存するような重度の感染創に対しても治療効果が認められるようになり2),17年には器具の発売と同時に保険承認された。また近年では,創内にかかる陰圧を経時的に変化させることで,より創傷治癒を促進させる方法も開発されている。
【文献】
1) Fleischmann W, et al:Unfallchirurg. 1993;96 (9):488-92.
2) Kiyokawa K, et al:Plast Reconstr Surg. 2007; 120(5):1257-65.
【解説】
森 秀樹 愛媛大学医学部附属病院形成外科講師