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【私の一冊】『坂の上の雲』

No.4728 (2014年12月06日発行) P.77

澤 芳樹 (大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

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  • 1968〜72年に産経新聞に連載された著者代表作の1つとなった長編歴史小説。
    (司馬遼太郎著、文藝春秋、1969年刊)

    いま、日本人が失っている日本人の原点をみる

    私は司馬遼太郎さんのファンである。産経新聞夕刊に私のことが連載で紹介された折に、ある方からうれしい連絡があった。司馬遼太郎記念館館長の上村洋行さんである。お言葉に甘えて、記念館を訪ねた。近鉄奈良線八戸ノ里駅から南に徒歩10分。閑静な住宅街にあった。

    『坂の上の雲』は珠玉の一冊である。主人公は維新後落ちぶれた松山藩の下級武士の子どもたち、正岡子規とその友人秋山真之、兄の好古の人生を描いたものであるが、主題は日本人と日露戦争である。100分の1の国土と10分の1の戦力で、日本はロシアになぜ勝てたのか。

    バルチック艦隊を破った連合艦隊の秋山真之作戦参謀。世界最強と言われたコサック騎兵隊を破った秋山好古陸軍少将。戦争に思いを馳せながらも闘病生活の中で俳句の世界を切り開くことに生きた正岡子規。新生国家「大日本帝国」が、もし日露戦争に負けたなら。その思いが、彼らをして、死に物狂いで国を守るために、恵まれた才能を最大限発揮させた。

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