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【私の一冊】『Walkabout』

No.4741 (2015年03月07日発行) P.75

鈴木國文 (名古屋大学大学院医学系研究科リハビリ テーション療法学専攻作業療法学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-14

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  • 写真家・竹沢うるま氏は1977年生まれ。雑誌社のスタッフフォトグラファーを経て独立。雑誌・広告写真分野で活躍、自然写真家として活動する。世界中をめぐる旅で撮影した350万点の中から280点を収載。
    竹沢うるま 著(写真集、小学館、2013年刊)

    人の営みに迫る圧倒的な写真の力

    街中で少し時間が空いて、近くに写真展があると、自然にそちらに足が向く。静かな空間に並ぶ写真は、いつも私の中に少し異質な空気を入れてくれる。その日もそんな折だったと思う、よく知るギャラリーに何となく足を踏み入れた。足を入れてすぐ、私は何かにとらえられ、動けなくなるような感覚をもった。一群の写真の異様なほどの力に、私は、見据えられたような思いで足を止めたのだ。久しぶりだった、こうした力に触れたのは。

    3年間、世界中を歩き、103の国と地域を巡りながら写真を撮る。人の営みを撮る。人が生まれてから死ぬまでの、人の姿を撮る。食べること、学ぶこと、祈ること、愛すること、群れること、病むこと、そして死ぬこと…。それらの写真には、人とその世界との危ういつながりに対する痛切とも言うべき思いが映りこんでいた。私は多分、写真の中にこめられた写真家自身の眼に見据えられたのだと思う。

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