神経内分泌腫瘍はneuroendocrine neoplasms(NEN)と総称され,高分化で比較的緩徐な進行を示すものをneuroendocrine tumor(NET),低分化できわめて進行が速いものをneuroendocrine carcinoma(NEC)と区別し取り扱うことが肝要である。pNETでは,さらにki67指数によりNET G1(<3%),NET G2(3~20%),NET G3(>20%)と分類され,予後が異なることが知られている。
機能性腫瘍では,低血糖症状(インスリノーマ),消化性潰瘍,逆流性食道炎,下痢(ガストリノーマ),皮膚紅潮,精神症状,右心不全(カルチノイド症候群)がみられるが,非機能性では無症状で偶発的に発見される。
腹部超音波,CT,MRI,ソマトスタチン受容体シンチグラフィー,FDG-PET検査により全身検索を行い,超音波内視鏡(EUS)にて存在診断を行うとともに,できる限りEUS下針生検(FNA)にて,病理学的診断をつける必要がある。また,機能性で病変の局在が不明の場合は,選択的動脈内刺激薬注入法(SASIテスト)が有用である。多発内分泌腫瘍症1型(MEN type 1)の場合は,下垂体,副甲状腺等の精査も必要である。
機能性pNETでは,ホルモン症状をコントロールする目的で,ソマトスタチンアナログ〔ソマチュリン®(ランレオチド)またはサンドスタチン®(オクトレオチド)〕が使用される。また,ガストリノーマにおける消化性潰瘍では,プロトンポンプ阻害薬〔ネキシウム®(エソメプラゾール)〕が推奨される。
腫瘍制御の目的では,局所に限局している病変は外科的切除を選択する。機能性の場合は,臨床症状の改善にもつながることよりその意義は高い。術式は一般的に,定型的手術が施行されるが,2cm以下の小病変や多発症例では,過大侵襲の面から核出術を含む縮小手術も考慮される。しかしながら小病変でもリンパ節転移を認めることもあり,リンパ節のサンプリングや郭清は積極的に行う必要がある。一方,肝転移を含めた遠隔転移を伴う症例では,集学的治療の一環として原発切除や,原発および肝転移の外科的切除は検討する必要がある。しかし,近年の薬物療法の進歩により,転移を伴うpNETでの外科的切除の意義は低下しており,少なくとも肉眼的完全切除が可能な症例に限るべきである。
薬物療法では,ソマトスタチンアナログ〔ソマチュリン®(ランレオチド)〕,分子標的治療薬〔アフィニトール®(エベロリムス),スーテント®(スニチニブ)〕,抗癌剤〔ザノサー®(ストレプトゾシン)〕が保険適用となっており,使用可能である。これまでのエビデンスから,いずれの薬剤も単独で使用するべき治療薬であり,腫瘍量が少なく増殖が緩徐な場合はソマトスタチンアナログ,腫瘍量が多く増殖が急速な場合は抗癌剤,その中間的な場合は分子標的治療薬が使用される。患者背景と薬剤の副作用に十分に注意し治療薬を選択することが肝要である。また,肝転移のコントロールとして,肝動脈塞栓術(TACE)やラジオ波焼灼術(RFA)も選択される。しかしながら膵頭十二指腸切除術後の症例では,胆管炎のリスクが高いことより積極的には勧められない。また,欧米では,ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)やカペシタビン+テモゾロミド療法(CAPTEM療法)が,有用な治療として報告されているが,国内では未承認である。
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